2009 Fiscal Year Annual Research Report
公教育の変容過程における保護者および地域住民の位置づけに関する実証的研究
Project/Area Number |
09J09025
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
武井 哲郎 The University of Tokyo, 大学院・教育学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ボランティア / 学校参加 / 安価な労働力 / 協働 / オルタナティブ・スクール / 代案教育 |
Research Abstract |
本年度は、保護者・地域住民の公教育における位置づけを捉えるための基礎的な作業として、次の二つの考察を進めた。第一に,公立学校の運営や活動に携わる保護者・地域住民に焦点を当て、フィールドワークおよびインタビュー調査を実施した。「学校支援ボランティア」の実践に見られるように、近年では、保護者・地域住民に、学校の経営に参加するだけでなく、その活動を支援し、責任を分有することが求められつつある。しかし、責任の分有を求められているとは言え、教育活動を支援する保護者・地域住民は、教員との軋轢を起こすことのないよう、その実践のあり方にまで介入することは少ない。そのため、保護者・地域住民の活動が、学校の下請けと化し、安価な労働力として用いられうることが、調査を通じて明らかとなった。また、子どもが学習や生活に抱える困難を受け止めながら、その解決に向けて教員の進める実践に働きかける保護者・地域住民の活動が、学校-家庭・地域の「協働」に深化をもたらす可能性について、社会学で展開されている議論にも目を向けながら、検討を加えた。第二に,独自の教育理念を追求するオルタナティブ・スクールでのフィールドワークおよびインタビュー調査を実施した。既存の公立学校の枠組みでは包含することのできない保護者の多様な教育ニーズに対応するため、オルタナティブ・スクールの果たす役割に見直しが図られてきた。オルタナティブ・スクールの側も、財政面の安定を図るため、学校法人となることで公教育の一端に位置づくものが現れるなど,行政との連携を積極的に図るようになっている。しかし、公教育の一端に位置づくことや、行政との連携を図ることは、独自の教育理念に変質を迫られる可能性を孕んでいることが、調査を通じて明らかとなった。本年度は、日本のオルタナティブ・スクールだけでなく、韓国の代案教育にも目を向けることで、データ収集と考察を行っている。
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Research Products
(3 results)