2009 Fiscal Year Annual Research Report
ベータ水素を有するハロゲン化アルキルのカルボニル化反応の開発
Project/Area Number |
09J09069
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中村 晃史 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(D1)
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Keywords | 有機金属触媒 / カルボニル化反応 / C1資源 |
Research Abstract |
本研究では、安価なC1資源である一酸化炭素を用いた新規反応の開発をテーマとしている。21年度においては、申請時に提示していた「ホスフィンスルホナート配位子を有するパラジウム錯体」を触媒として用いて研究を行った。これまでこの触媒はエチレンの単独重合において他の触媒では達成できない、活性化剤を用いず直鎖のポリエチレンを選択的に与える触媒として近年注目を集めている。しかしながらその理由については明らかでなかったため、まずその反応について詳細に解析し反応機構を初めて明らかにした。その結果、エチレンの加圧がβ水素脱離抑制に重要な因子であることが示唆された。また、一酸化炭素との反応性についても詳細に解析し、本触媒系の配位子の特徴として「スルホナート基のトランス位に一酸化炭素が配位すると、強く逆供与を受け続く反応を促進しうる」ことを見出した。これらの結果は、本研究課題を遂行するにあたり、非常に重要な基礎的知見を与えるものである。 また、極性モノマーの配位共重合に関する総説を執筆し、Chemical Reviews誌に掲載された。これは当該分野におけるブレイクスルーであったホスフィンスルホナート配位子を用いた重合系などに関して総括的な知見を与えるものであり、広く化学の発展に寄与する仕事であったと考えられる。 以上本年度は安価なC1資源である一酸化炭素の新規触媒反応の開拓を目標に、主に注目している触媒の素反応についての詳細な解析を行った。また、それらに関する総説を執筆した。これらは今後本研究課題を遂行する上で重要な糧となるだけでなく、世界中の化学者と触媒の基本的反応についての知見を共有するという観点から考えても意義のあるものである。
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