2010 Fiscal Year Annual Research Report
ベータ水素を有するハロゲン化アルキルのカルボニル化反応の開発
Project/Area Number |
09J09069
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中村 晃史 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 有機金属触媒 / C1資源 / 配位重合 |
Research Abstract |
本年度は、ホスフィン-スルホナート配位子を有するパラジウム錯体を用いると「なぜ極性ビニルモノマーと一酸化炭素の共重合に成功したのか」、「従来系との違いは何か」という点を実験的・計算化学的に明らかにした。まず、メチルパラジウム錯体への一酸化炭素・アクリル酸メチルの挿入により得られた錯体を単離した。次に、この錯体に対し6MPaの一酸化炭素圧下で高圧NMRを測定すると、アシル錯体が観測された。また、一酸化炭素を系中から除くと元の錯体に戻ったため、この反応は可逆であることが分かった。一方、この反応はDPPEを有する同様の錯体では観測されなかった。 続いてDFT計算を行い、錯体1からの触媒サイクルの全貌を明らかにした。するとサイクル全体の律速段階はオレフィンの挿入段階であることが分かった。また、DPPEを配位子として用いた場合と比べ、その律速段階が安定化されていることが示された。この安定化の理由として以下の二つが考察できる。(1)スルホナートの嵩の低さがオレフィン挿入の遷移状態で立体反発を少なくしている。(2)早期遷移状態であるオレフィン挿入はその直前のオレフィン配位錯体と近く、そのオレフィン錯体はパラジウム中心からの逆供与により安定化されている。これはオレフィンのトランス位に存在するスルホナート部位が弱いパイ受容性・孤立電子対を持つことによる効果であると考えられる。 より広い視野で有機化学の潮流を知るため、スクリプス研究所のPhilS.Baran教授の研究室に留学した。この中で、様々なノウハウを学ぶと共に、実際の有機合成化学で現在必要とされている反応はどのようなものであるか知ることができた。
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