2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J09094
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
凌 霄 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 分子モーター / キネシン / 加水分解 |
Research Abstract |
キネシンはATPを加水分解しながら2つの頭部を交互に踏み出して、微小管上を歩くように連続的に運動するモータータンパク質である。このような運動を実現するためには、両頭部結合状態から必ず後頭部が先に微小管から離れる必要がある。この後頭部の選択的解離には2つの頭部をつなぐネックリンカーと呼ばれる部位を介した負荷が重要であると考えられているが、具体的な仕組みはわかっていない。私はネックリンカーと頭部との相互作用がATP加水分解の促進に必要であり、前頭部ではネックリンカーが後ろに引っ張られて相互作用できないために、ATP加水分解やその後の微小管からの解離が阻害されるというモデルを考えた。 このモデルを検証するために、ネックリンカーの配列を欠失させた変異体を作成し、ATP加水分解活性や微小管への親和性さらには微小管上での構造状態を詳しく調べた。その結果、ネックリンカーの配列をC末端側から欠失させるにつれてATP加水分解活性が徐々に低下し、完全に欠失させると活性はほぼ失われた。またネックリンカー欠失変異体は飽和ATP存在下でも微小管に長い時間結合したままほとんど解離しなかった。蛍光性ATPを用いた実験においては、微小管に結合したこの変異体にはATPはほとんど結合していないことが示された。さらに東京大学医学部の吉川研究室との共同研究によりクライオ電子顕微鏡を用いて微小管上でのネックリンカー欠失変異体を観察したところ、野生型ではATP結合状態をとることが知られているAMPPNP存在下でも、ヌクレオチドフリーに類似した構造状態をとることがわかった。これらの結果は、ネックリンカーを欠失させるとATP加水分解反応が進まずにATPが可逆的に解離してしまうことを示すものであり、ネックリンカーが後ろに引っ張られることによりATP加水分解反応が抑制されるという私のモデルを支持するものであった。
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Research Products
(3 results)