Research Abstract |
小型磁気冷凍機のための熱スイッチの作成に関する研究を行った.熱スイッチは通過状態と遮断状態とで,熱抵抗を大きく変化させることのできる装置である.熱スイッチの性能の向上には,通過状態での熱抵抗を小さくすることと,遮断状態での熱抵抗を大きくすることが,共に重要である.そこで,通過状態では2つの物体を接触させ,熱伝導により熱を伝え,遮断状態では低熱伝導率材料によって片方の物体を真空中に保持し,断熱することを考えた.昨年度までに,ON状態での接触伝熱を促進するために,カーボンナノチューブを用いて接触熱抵抗を低減させる研究を行った.その結果,より高い伝熱性能を得るためには,高い接触面圧が必要であることがわかった.そこで,本年度は,OFF状態での高い断熱性能を維持したまま,ON状態で高い接触面圧を得ることができる構造に関して研究をおこなった.熱スイッチの接触子部分は,外部との断熱のために,パリレンの微細な梁で支えられている.一般に,微細構造による,高断熱と高剛性は両立が難しい.そこで,パリレンの梁の途中に変位角の拘束を与えることで,剛性を高める手法を考案した.変位角の拘束は,複数ある梁の等温部を固い拘束梁でつなぐことで実現した。まず,有限要素法による計算によって,剛性が高められることと,断熱性能が大きく悪化しないことを確かめた.その後実際に熱スイッチの作成を行い,剛性試験をおこなった.その結果,拘束梁がある場合には,ない場合に比べて1.6倍程度剛性が高くなることが確かめられた.この結果を,国際学会において発表した.また,これらの結果をまとめ,現在学術雑誌に投稿,審査中である.
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