2009 Fiscal Year Annual Research Report
光合成の集光装置の発現制御に関わる新規緑/赤色光受容体の機能解析
Project/Area Number |
09J09146
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
広瀬 侑 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | フィトクロム / 光合成 / 光受容体 / フィコビリソーム / シアノバクテリオクロム |
Research Abstract |
シアノバクテリアは酸素発生型の光合成を行う原核生物であり、光化学系複合体の集光装置としてフィコビリソームを持つ。一部の種のフィコビリソームでは、赤色光を吸収するタンパク質であるフィコシアニンと、緑色光を吸収するタンパク質であるフィコエリスリンの組成が緑・赤色光に応答して調節されることが知られている。この現象は「補色順化;complementary chromatic adaptation」と呼ばれ、その存在は100年以上も前から認知されていたが、その分子機構には不明な点が多い。我々は、フィコエリスリン含量のみが調節されるタイプの補色順化(2型)を示すNostoc punctiforme ATCC 29133において、シアノバクテリア独自のフィトクロム様光受容体(シアノバクテリオクロム)の1つであるCcaSが、CcaRのリン酸化を介してフィコエリスリンの発現調節を行なうことを明らかにした。一方、CcaSとよく似た色素結合ドメインを持つシアノバクテリオクロムであるRcaEは、フィコシアニン含量とフィコエリスリン含量の両方を調節するタイプの補色順化(3型)を制御することが示唆されている。我々は、RcaEの色素結合ドメインもCcaSと同様の緑・赤色可逆光変換を示すことを明らかにした。しかし、RcaEよりもCcaSのほうがドメイン構成やシグナル伝達経路が単純である。このことは、過去にCcaS→RcaEへの進化が起こり、その結果、2つのタイプの補色順化が成立したことを示唆している。これらの研究は、補色順化を制御する光受容体の生化学諸性質と、その遺伝子発現の制御機構を結びつけた先駆的な研究であり、光応答の研究分野における重要な成果である。
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