2011 Fiscal Year Annual Research Report
人工キラル構造のモルフォロジー制御による新奇光機能開拓の研究
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09J09149
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
神田 夏輝 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | メタマテリアル / テラヘルツ / エリプソメトリー |
Research Abstract |
本研究は、微細加工技術を用いて作製した人工構造などの形状制御を用いることで非局所的な光学応答を制御し、巨大な光学活性を発現させ、動的制御化を行った偏光制御を実現することを目標として開始した。光学活性による偏光制御は入射偏光の向きによらないという特徴を持ち、新たな偏光制御法として期待される。とくにテラヘルツ領域では偏光制御技術が未成熟であるため、幅広い応用の可能性を持つテラヘルツ偏光計測にとって偏光制御や偏光変調は重要な課題である。前年度までの研究成果により、半導体基板上に作製した金薄膜キラル格子に対する光励起によりTHz領域の光学活性を動的に制御できることに成功し、そのメカニズムの理解ができた。 この理解を踏まえ、本年度においては金薄膜キラル格子構造を用いずに「光」のみによってキラリティーを制御することを目標とした。前述の実験においては励起強度を変化させることで光学活性の大きさを変化させることができるが、金薄膜キラル格子の形状によって決まるキラリティーの向きを変化させることができなかった。これに対し、光強度の空間分布がキラルな励起光により半導体基板中のキャリア分布形状を直接制御できれば、励起光のパターンを変化させることでキラリティーの向きも制御できる。 そこで、LCOS-SLM(Liquid Crystal on Si)を用いた二次元空間光変調を行い、卍型周期パターンの励起光を生成して、Si中のキャリア分布形状の直接制御を行った。このような励起のもとでTHz波を入射しTHz波の偏光を測定したところ、励起光の卍パターンの向きに依存して反転する偏光回転を観測することに成功した。励起強度を大きくすることで偏光回転が大きくなり、パターンの周期を大きくすることで偏光回転スペクトルが低周波側にシフトすることが確かめられた。 この実験により、本研究の大きな目標のひとつであった「光による動的モルフォロジー制御」を達成することができ、THz電磁波の偏光制御を動的に行うことに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本計画の当初の目標である、光のみによるTHz領域光学活性の動的制御に成功した。これに加え、本研究により積み上げられたTHz電磁は偏光測定手法及び偏光制御手法とそこで得られた知見は大きな広がりを見せた。具体的には、偏光選択則の理解に基づいた磁性体中の磁化ベクトル制御や、東京農工大との共同研究による広帯域円偏光THz波の発生につながった。また、偏光選択則の理解からTHz領域でのベクトルビーム発生にも成功した。 このような理由により、本研究は当初の計画以上に進展したといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
上述のとおり、本研究課題は最終年度をもって多くの部分を達成することができた。現在、本研究成果を論文誌に投稿する作業を進めている。 広帯域THz円偏光発生とその応用については東京大学と東京農工大学の共同研究で今後も進められる。また、THzベクトルビームの検証、その利用については東京大学で引き続き行われる。
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Research Products
(5 results)