2009 Fiscal Year Annual Research Report
ポルフィリン化合物による遺伝子発現制御: 癌の光線力学療法への応用
Project/Area Number |
09J09159
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
萩谷 祐一郎 Tokyo Institute of Technology, 大学院・生命理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 光線力学療法 / アミノレブリン酸 / 胃癌 / ポルフィリン / プロトポルフィリンIX / HPLC / 一重項酸素 / LED |
Research Abstract |
ポルフィリン化合物の医学への応用として癌の光線力学療法(Photodynamic therapy;PDT)がる。ポルフィリン化合物は励起されると、強い細胞傷害性を持つ一重項酸素を産生する。PDTではこれらの原理を利用し、病巣部に可視光のレーザーを照射することで、メスを用いず、かつ特異的に癌細胞を破壊できる。つまりPDTは患者の身体的負担が軽く、患者のQOLを確保する上でも有用な治療法といえる。しかし、癌細胞への特異的な蓄積の分子メカニズムは未だ解明されておらず、PDT薬の腫瘍選択性の向上・PDT効果の個人差の予測が求められている。本研究では、ポルフィリン化合物と遺伝子発現の関係に着目して、ポルフィリン化合物が癌細胞に蓄積しやすい分子メカニズムの解明を目的としている。 当該年度は、in vitro PDTアッセイ系・細胞内ポルフィリンの定量に向けたHPLC系の確立を行った。 LED光照射装置を用いたin vitro PDTアッセイ系の構築、 まず、SBIアラプロモ株式会社との共同研究によって中心波長640nmのLED光を100cm2に渡って均一に照射できる装置を設計した。この照射装置によって、細胞培養用96-well plateの各ウェルに対し、再現性良く強度を揃えた光照射を行うことが可能になった(3.6mW/cm2)。ヒト子宮頸がん由来HeLa細胞・光増感物質アミノレブリン酸(ALA)を用いて、PDTアッセイの条件の最適化を行った。細胞生存率はMTTアッセイにより評価した。5種類の胃がん由来細胞株に対して、in vitro ALA-PDT(1080mJ/cm2)を行った結果、高い感受性を示す株と全く感受性を示さない株が認められた(IC50の順序;NKPS>TMK-1>KKLS>MKN28>MKN45)。 High performance liquid chromatograhy(HPLC)を用いた細胞内ポルフィリン定量法の確立 近年、PDTに用いる新しい薬物としてアミノレブリン酸(ALA)が着目されている。ALAは生体内に取り込まれると強力な光増感剤であるプロトポルフィリンIX(PpIX)へと代謝される前駆体であり、がん研異的ポルフィリン蓄積を亢進させることが知られている。しかし、いずれのポルフィリン中間体も類似した蛍光スペクトルを示すため、蛍光分光光度計でサンプル中に含まれるポルフィリンの分析を行うことは困難であった。そこで、HPLCで各ポルフィリン中間体を分離した後に、蛍光強度で定量する系を確立した。 In vitro ALA-PDTを行った5種類の胃がん由来細胞株において、1mmol/L ALA存在下で4時間培養した時の細胞内ポルフィリンを分析したところ、ALA-PDTに対する感受性と細胞内PpIX蓄積量の間に明確な相関が認められた(PpIX蓄積量の順序;NKPS<TMK-1<KKLS<MKN28<MKN45)。
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Research Products
(6 results)