2010 Fiscal Year Annual Research Report
ポルフィリン化合物による遺伝子発現制御: 癌の光線力学療法への応用
Project/Area Number |
09J09159
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
萩谷 祐一郎 東京工業大学, 大学院・生命理工学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | がんの光線力学療法 / 5-アミノレブリン酸 / プロトポルフィリンIX / PEPT1 / ABCG2 / 一重項酸素 / 治療効果予測因子 / GFP |
Research Abstract |
ポルフィリン化合物の医学への応用として癌の光線力学療法(Photodynamic therapy ; PDT)がる。ポルフィリン化合物は励起されると、強い細胞傷害性を持つ一重項酸素を産生する。PDTではこれらの原理を利用し、病巣部に可視光のレーザーを照射することで、メスを用いず、かつ特異的に癌細胞を破壊できる。つまりPDTは患者の身体的負担が軽く、患者のQOLを確保する上でも有用な治療法といえる。しかし、癌細胞への特異的な蓄積の分子メカニズムは未だ解明されておらず、PDT薬の腫瘍選択性の向上・PDT効果の個人差の予測が求められている。本研究では、ポルフィリン化合物と遺伝子発現の関係に着目して、ポルフィリン化合物が癌細胞に蓄積する分子機構の解明を目的としている。 当該年度は、mRNA定量RT-PCR法のためのプライマー設計・標的遺伝子の過剰発現または発現抑制株の樹立を行い、標的遺伝子がPDTおよび細胞内ポルフィリン蓄積に与える影響を評価した。 RT-PCR・Western blottingを用いたポルフィリン生合成関連遺伝子の発現解析 ポルフィリン生合成に関連する12遺伝子のmRNA配列に特異的なRT-PCR用プライマーを設計した。5種類のヒト胃がん由来細胞株を用いて、RT-PCR法で各遺伝子の発現解析を行った。その結果、アミノレブリン酸(ALA)を用いたPDTに対し、高い感受性を示す株と感受性を示さない株の間で、顕著に発現量が異なる2つの遺伝子ペプチドトランスポーターPEPT1およびATP-binding cassette(ABC)トランスポーターABCG2を同定した。Western blottingによって、PEPT1・ABCG2タンパク質の発現がPDT効果と相関する事を確認し、PDT効果に対するトランスポーターの役割が示唆された。 PEPT1過剰発現株・ABCG2発現抑制株の樹立 ALAの細胞内への取り込みを担うPEPT1と緑色蛍光タンパク質EGFPの融合タンパク質を発現するためのベクターを構築した。このプラスミドベクターを用いて、PEPT1-EGFP融合タンパク質を安定的に発現する細胞株を樹立した。EGFPの蛍光を観察することで、融合タンパク質が細胞膜表面に局在する事を確認した。PEPT1過剰発現株において、ALA添加後の細胞内ポルフィリン蓄積量、PDT感受性ともに顕著な増加が認められた。これより、PEPT1を介したALAの細胞内への取り込みが、PDT感受性を大きく左右することが示された。 一方、プロトポルフィリンIXの細胞外への排出を担うABCG2を標的としたsiRNAを用いて、ABCG2の発現を一過的に抑制する株を樹立した。ABCG2発現抑制株において、PEPT1過剰発現と同様に、ALA添加後の細胞内ポルフィリン蓄積量、PDT感受性ともに有意な増加を認めた。ABCG2タンパク質に特異的な阻害剤であるFumitremorgin CをALAと併用した場合、ABCG2の発現抑制と同様な効果を認めた。以上より、ALA-PDTの感受性を規定する因子として、ALAやポルフィリンの膜輸送が主要なPDT効果予測因子となりうる事を示し、現在論文投稿中である。
|
Research Products
(11 results)
-
[Journal Article] The effect of 5-aminolevulinic acid on cytochrome c oxidase activity in mouse liver2011
Author(s)
Ogura S., Maruyama K., Hagiya Y., Sugiyama Y, Tsuchiya K., Takahashi K., Abe F., Tabata K., Okura I., Nakajima M., Tanaka T.
-
Journal Title
BMC Research Notes
Volume: 2011(in press)
Peer Reviewed
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-