2009 Fiscal Year Annual Research Report
ヘテロ金属間相互作用制御に基づく新規無機分子光材料の開発
Project/Area Number |
09J09161
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高嶋 敏宏 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 人工光合成 / 金属間電荷移動錯体 / 多電子移動触媒 / ポリオキソメタレート |
Research Abstract |
人工光合成材料の開発に向けては多電子移動反応の可視光駆動ならびに光吸収中心と反応中心間の電子移動の制御が可能な光反応場の構築が必要である。本研究ではそのような光反応場を光耐久性が高く、化学的に設計制御が可能な無機分子のみで構築しようと研究を進めている。今年度は多電子還元反応の光誘起を目指し、金属間電荷移動遷移を利用した多核の光吸収中心の作成を行った。金属間電荷移動遷移を利用した光材料は酸化還元電位を基準に金属イオンを選択することにより、化学反応を効率良く触媒できることが現在までに報告されている。しかしこれら従来の反応系は電子ドナー、電子アクセプターイオンからなる二核系であり、多電子移動反応の駆動は原理的に不可能であった。そこで本研究では多核系においては複数個の電子あるいは正孔が系内に溜め込み可能であるという着想に基づき、新たに金属-クラスター間における電子的相互作用を制御した多核電荷移動錯体を開発した。系の構築は多孔質シリカ細孔内を反応場とし、タングステン酸化物クラスター(ポリオキソタングステート)とセリウムイオンを段階的に担持することにより行い、両方を担持した試料のみにおいて400から530nmの波長域に吸収が現れることを確認した。この吸収は光化学および熱化学的な手法による光吸収変化の観測およびX線吸収分光などを用い、セリウムからポリオキソタングステートへの電荷移動遷移に帰属されることを確認した。また有機物の酸化反応を用いて化学反応性を検討したところ、光照射下において反応が触媒的に駆動することが分かり、金属-クラスター間の電荷移動遷移を利用して化学反応を光誘起できることを初めて明らかにした。さらにポリオキソタングステートは分子骨格への金属置換が制御可能であり、これを利用し銅イオンを置換した系では酸素の二電子還元反応の進行により光反応活性が4倍以上に向上することを見出した。
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Research Products
(10 results)