2011 Fiscal Year Annual Research Report
ヘテロ金属間相互作用制御に基づく新規無機分子光材料の開発
Project/Area Number |
09J09161
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高嶋 敏宏 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 酸素発生反応 / 酸化マンガン / 反応機構 / 電気化学 / 光化学 |
Research Abstract |
酸素発生反応は人工光合成において最も重要なプロセスの一つであり、その効率的な駆動のための高活性触媒の開発が同研究分野の重要課題となっている。本研究では、マンガン酸化物表面における酸素発生反応の中間体が3価のマンガンイオンであり、これが不均化反応により不安定であることがマンガン酸化物の触媒活性が低いことの原因であることを前年度報告した。そこで今年度は不均化反応を抑制し、マンガン酸化物を用いた高活性酸素発生触媒の開発について検討を行った。具体的には3価のマンガンイオンの不安定性が3d電子状態の縮重に起因するという仮説を立て、これに基づき縮重状態を解くための材料設計として窒素化合物を配位させたマンガン酸化物ナノ粒子を開発した。分光電気化学的検討から窒素化合物を配位させたマンガン材料では中性条件下においても不均化反応が抑制できることを見出し、3価のマンガンイオンの生成電位のシフトに伴い酸素発生反応の過電圧を減少できることを明らかにした。以上の結果は、3価のマンガンイオンが触媒活性を支配している反応中間体であるという本研究の提案を支持すると同時に、今後のマンガン系酸素発生触媒の開発の指針を示すものであると考えられる。さらに、この結果を踏まえ、この触媒と光吸収ユニットとして本研究でこれまでに開発してきたCe/W光電荷移動錯体を組み合わせた集積体を開発した。この集積体では電子ドナーとなるセリウムイオンがマンガン酸素発生触媒と電子アクセプターのタングステンクラスターをつなぐ役割を果たし、その結果光反応場の構築のために必要な順番に金属イオンを集積することに成功した。開発した光材料は電子受容体存在下で光酸素発生反応を駆動できることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、人工光合成材料の開発に向けて無機分子材料による光酸素発生反応の駆動を行うことを目的とし、研究を行ってきた。その結果、今年度申請者は酸素発生触媒の高活性化および光吸収中心との集積を実現し、最終的にこれらの成果に基づき酸素発生反応を光駆動することに成功した。さらに酸素発生触媒開発の際に反応中間体の安定性制御に基づいて検討したマンガン系酸素発生触媒の高活性化手法は、今後の材料設計の指針になりうるものである。
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Strategy for Future Research Activity |
光酸素発生により獲得した電子を用いて、有用物質生産のための還元反応(二酸化炭素還元、水素発生)を駆動できるシステムを構築する。本研究で電子アクセプターとして用いているヘテロポリ酸は分子設計によりこれらの反応について触媒として機能することが知られていることから、それらの知見を利用することにより無機分子系材料で光エネルギー変換を実現できると考えられる。
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Research Products
(8 results)