2009 Fiscal Year Annual Research Report
デイヴィッド・ヒュームの因果論の研究と、その現代的意義の検討
Project/Area Number |
09J09168
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
萬屋 博喜 The University of Tokyo, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ヒューム / 因果性 / 必然性 / 自然法則 / 投影主義 / 操作主義 |
Research Abstract |
今年度は、デイヴィッド・ヒュームの因果論の検討と現代因果論におけるヒューム主義の検討を主な課題として研究し、その成果を口頭や論文の形で発表した。今年度の研究成果の意義は、先行研究では不十分であった必然性と自然法則に関するヒュームの見解を整合的に理解し、現代因果論におけるヒューム哲学の継承・発展の可能性を説得的に示したことにある。以下では、具体的な研究成果の内容を述べる。第一に、ヒュームの因果論についての考察は、(1)必然性に関する見解と(2)自然法則に関する見解に分けて研究報告を行った。まず、必然性に関する見解については、必然性に関する見解の解釈として投影主義が適切なことを示し、その解釈を補強する議論を行った。また、自然法則に関する見解については、先行研究で指摘されてきた自然法則と偶然的一般化を区別できないという困難をとりあげ、その困難がヒュームによって一定の解決策が与えられていることを示した。第二に、現代因果論におけるヒューム主義についての考察は、(1)因果性と行為者性の関係、(2)行為の道徳的評価における因果性の役割、そして(3)行為の因果説に分けて研究報告を行った。まず、因果性と行為者性の関係については、因果性に関するヒューム主義に対する代替理論の一つである操作主義の可能性を検討し、操作主義に対する重要な反論に応答することで、ヒューム主義は現行の操作主義との対話が不可欠であるということを示した。次に、行為の道徳的評価における因果性の役割については、行為の善悪を評価する原理の一つである二重結果原理をとりあげ、その原理において因果性が重要な役割を果たしており、その原理は傍観者視点での概念的直観ではなく当事者視点での経験的直観によって根拠づけられることを示した。最後に、行為の因果説については、信念・欲求と行為の間の因果関係は厳密な物理法則の下に包摂される必要がなく、因果性に関するヒューム主義的観点から両者は大まかな一般性をもつ慣習的連関の下に包摂されると論じた。
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Research Products
(6 results)