2010 Fiscal Year Annual Research Report
ゼブラフィッシュの逃避行動制御の獲得に関する生理学的・分子生物学的研究
Project/Area Number |
09J09220
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
渡邉 貴樹 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | カリウムチャネル / 興奮性 / ゼブラフィッシュ / マウスナー細胞 |
Research Abstract |
脳のニューロンはそれぞれの働きに応じて、特色のある興奮性を示す。同じように生まれたニューロンが、どのように異なる興奮性を獲得して運動制御に関わるのかを分子レベルで調べるのが本研究の目的である。ゼブラフィッシュの後脳に存在する網様体脊髄路(RS)ニューロン群の一つであるマウスナー(M)細胞とその相同ニューロンのMiD2/3cmは、同時期に後脳の隣接する分節の同じ位置に生まれ,共通の形態学的特徴をもつが、発達に伴い異なる発火特性を示す。すなわち、MiD2/3cmは他のRSニューロンと同様に膜電位を脱分極させると、脱分極の大きさに従った発火頻度で連続発火するが、M細胞だけは単発の活動電位しか発生しない。さらに興味深いことに、このM細胞の発火特性は、発達とともに獲得される。このような発火特性の違いを決定する分子基盤を明らかにするために、単発発火特性に必要な低閾値型電位依存性カリウムチャネルKv1ファミリーのα及びβサブユニットの発現を解析した。αサブユニットに関してはM細胞でのKv1.1の発現を認めたが、予想外に発生初期からM細胞だけでなく相同ニューロンでも発現することを見出した。一方、βサブユニットは発生初期のM細胞や相同ニューロンには認められないのに対して、単発発火を示す発生後期のM細胞では強く発現していた。このβサブユニットにはKv1.1による電流量を増加させる機能があることを、アフリカツメガエル卵母細胞を用いた再構成系で示した。さらに、連続発火する時期のM細胞にβサブユニットを過剰発現させ、単発発火特性を獲得させることに成功した。以上の結果は、M細胞の単発発火特性の獲得にKv1.1αサブユニットとKvβサブユニットの発現の組み合わせが重要であることを強く示唆し、ニューロンの興奮性を決定付ける要因として新しい概念を提示する。
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Research Products
(2 results)