2010 Fiscal Year Annual Research Report
フランス、ゴシック教会堂扉口基壇の形態変遷及び機能の総合的研究
Project/Area Number |
09J09265
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
竹村 朋子 名古屋大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ゴシック教会堂 / サンス、サンテ=ティエンヌ大聖堂 / 扉口基壇 / 装飾モティーフ / ゴシック彫刻 / トリ=シャトー、サント=マリー=マドレーヌ教会 / マント、ノートル=ダム参事会聖堂 / ルーアン、ノートル=ダム大聖堂 |
Research Abstract |
平成22年度は、基壇の図像生成の過程を明らかにすることを中心に調査・研究を進めてきた。報告者は、その中でも、初期ゴシック教会堂基壇部に見られるモティーフの変遷に着目した。 トリ=シャトーから、マント、ルーアンの各教会堂扉口基壇には、装飾モティーフに影響関係があることは、すでに先行研究で指摘されているが、どのモティーフがどこに、どのように影響を与えているのか、13世紀を迎え、扉口基壇への表現が増えつつある中、これらの影響は他の教会堂にも波及したのかについて、詳細な言及はなされてこなかった。 報告者は、その中でも、花文様と連珠文の2つの装飾モティーフについて比較・分析を行った。その結果、花文様はマントの扉口基壇から、サンス北扉口基壇へ、連珠文は、サンス中央扉口基壇へと継承されていることを指摘した。 さらに、これらのモティーフは、サンス以前に制作されたマント、ルーアンの扉口基壇において、他の装飾文様と同等に扱われていた、あるいは、自立した機能を果たしてはいなかったが、サンス北・中央両扉口基壇では、図像を取り囲む「枠」としての機能を獲得したことを指摘した。また、それは、サンスに続くパリ中央扉口基壇にもさらに簡略化された形態で現れていることも確認した。 以上の研究成果は、先行研究で言及されていなかった、トリ=シャトー、マント、ルーアンにおけるモティーフが、その枠化という点において、サンスに至るまで影響関係が指摘できるという点で大変意義深いものであり、また、基壇において図像を取り囲む枠は、13世紀以降のゴシック教会堂に求められた垂直性を構成する一要素となることを考慮すれば、基壇の装飾モティーフが枠となる過程を考察した報告者の研究は、ゴシック教会堂扉口基壇の機能の一端を解明する点において、重要な役割を担っていると思われる。 なお、2010年度にまとめたこの研究成果は、2011年名古屋大学美学美術史研究論集に掲載予定である。
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Research Products
(1 results)