2009 Fiscal Year Annual Research Report
海馬において記憶を制御するニューロステロイド合成系の研究
Project/Area Number |
09J09317
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
肥後 心平 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 脳 / ステロイドホルモン / 性差 / 神経 / ニューロステロイド |
Research Abstract |
(1)脳内性ステロイド濃度の性周期変動と雌雄差 適切な誘導体化の探索を含む詳細な条件検討を行い、LC-MS/MSを用いた脳内性ステロイド濃度測定法の確立を達成した。本研究で確立した測定法は従来に比べ感度が飛躍的に向上し、定量限界以下であるとされてきた雄ラット血中エストラジオール濃度の測定を可能にした。濃度測定により雌ラットでも血中に比べ海馬内のエストラジオール・テストステロン濃度が有意に高いことがわかり、脳に対する性ステロイドの作用は血中由来ではなく脳内合成系由来のものが中心的な役割を果たすという予想が裏付けられた。また、エストラジオールは各性周期に伴う血中・海馬内濃度の変動が観測された。血中エストラジオール濃度は雌より雄が低かった。一方、雌の海馬内エストラジオール濃度は排卵期で最大の1.7nM、排卵間期で最小の0.5nMであり、雄ラットの約8nMと比べかなり小さいという血中とは逆の傾向が見られた。女性ホルモンであるエストラジオールが雌ではなく雄の海馬でかなり高いという結果はこれまでの常識を覆す発見であるといえる。エストラジオールは神経に対し最も強力な作用を持つステロイドの一つであることを考えあわせると、この海馬内エストラジオール濃度の雌雄差が記憶学習の雌雄差形成に中心的な役割を果たしていることが強く示唆される(以上Higo.Hojo., Endocrinology 2009)。上記に加えテストステロン、エストロン、プロゲステロン濃度も測定が終了し、論文発表予定である。 (2)発現解析と代謝実験による脳内ステロイド合成活性の測定法の確立 各性ステロイド合成酵素について最近接法による熱力学的計算により至適プライマーを作製、条件検討を行なった。また、代謝実験についても条件検討を行い、測定法を確立した(Higo, Hojo., BBRC 2009)。
|
Research Products
(5 results)