2010 Fiscal Year Annual Research Report
シャーマニズムの現代的展開についての沖縄と韓国を事例とした比較宗教学的研究
Project/Area Number |
09J09350
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
新里 喜宣 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 韓国 / 先祖祭祀 / シャーマニズム / 巫俗 / 京城帝国大学 / 二重構造モデル / 葬送儀礼 / 死生 |
Research Abstract |
平成22年度の研究は、韓国の先祖祭祀やシャーマニズムについての先行研究を網羅的に読み込む作業から始められた。韓国の先祖祭祀及びシャーマニズムの研究は、京城帝国大学の教授を務めた秋葉隆という社会学者の提起した理論「二重構造モデル」の影響を強く受けながら発展してきた。そのため、先学の研究を批判的に継承するためには、まず秋葉の理論がどのような性格を持つものかを検証し、その後の研究との関連性を問い直す作業が必要だと考えられたためである。「二重構造モデル」とは、韓国朝鮮においては二種の社会伝統、すなわち男性主導の儒教祭祀と女性中心の巫俗儀礼が混在しており、それらが相互に補完的な機能を呈することで社会構造が成り立っているというものであった。そして、本研究においては前述の作業により、韓国の先祖祭祀・シャーマニズムについての先行研究の多くは秋葉の提示した理論を大筋においては受け入れて論を発展させてきたことが明らかになった。 本研究は次の段階として、秋葉の理論は現代の韓国を捉える上で有効か否かの検証を行った。その結果、確かに韓国においては現在でも儒教等の影響による男児専攻思想などが散見され、儒教と巫俗という二項対立モデルで説明できる宗教現象も事実存在しているものの、大勢においては価値観の変化により秋葉の理論を適用できる射程はだいぶ限られたものになってきていると考えられる。例えば、韓国においては1990年代後半以降火葬の急激な普及を筆頭に先祖祭祀・葬送儀礼に大きな変化が起こってきた。これらの変化の背景には社会構造上の変容、すなわち儒教と巫俗というモデルでは捉えきれない宗教観、死生観の変化が起こっているのだと考えられるが、本研究は、先行研究の読み込みと私自身が行ったフィールドワーで得られた資料も用いながら、韓国の社会構造の変化とそれを捉えるための研究視点の構築を主な内容とする論文を執筆した。
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Research Products
(2 results)