2009 Fiscal Year Annual Research Report
一般的信頼の概念測定の普遍性と協力行動に対する効果に関する研究
Project/Area Number |
09J09386
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
大崎 裕子 東京工業大学, 大学院・社会理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 一般的信頼 / 社会環境評価 / 道徳的価値 / 想定他者 |
Research Abstract |
21年度の研究課題としては、一般的信頼感の概念および測定における曖昧性の克服を主な目的とした。概念の曖昧性として着目したのは、一般的信頼が「自身の属する社会環境の信頼性に対する判断」という社会環境評価の側面と、「人は、他者を信頼すべきである」という道徳的価値の側面を併せ持つ可能性である。また、測定の曖昧性としては、一般的信頼尺度において回答者が「たいていの人」として誰を想定しているか(想定他者の範囲)という問題である。これらの疑問を計量的に検証するため、日本全国成人男女を対象にしたインターネット調査を行った。主な分析結果は、以下のとおりである。 第一に、一般的信頼と社会環境評価・道徳的価値の各要素との相関を分析したところ、社会環境評価として「社会における集団間対立」を強く認識している人ほど一般的信頼が低く、道徳的価値としての「前提的対人肯定観」が強い人ほど一般的信頼が高いことがわかった。すなわち一般的信頼という概念は、社会環境への評価という計算的側面を持ちながら、そうした計算を超えて、とりあえずは相手の信頼性を肯定的に見るべきであるという価値的側面を持つ可能性が計量的に示された。 第二に、一般的信頼尺度の想定他者範囲を検証するため、一般的信頼尺度と段階的信頼の各尺度との連関度を確認したところ、一般的信頼尺度は少なくとも、"近隣に住む人々"や"同じ職場や学校の人々"などの「"近しい他者"への信頼」よりは、"日本人一般"や"日本人に限らず人間一般"、すなわち「"一般的他者"への信頼」に近い尺度であることが確認された。 以上により、一般的信頼の持つ多義性を示すともに、近年の信頼研究で国際的に用いられる一般的信頼尺度の想定他者に関する一定の妥当性を確認したことは、今後の信頼研究において一般的信頼の意味を再考し、またその測定尺度を用いた研究を行っていく上で、有意義であると考えている。
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Research Products
(1 results)