2010 Fiscal Year Annual Research Report
電子線励起フラーレン重合反応に基づく新しいトポロジカルナノカーボンの創製
Project/Area Number |
09J09489
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
高嶋 明人 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | トポロジカルナノカーボン / 擬一次元金属 / パイエルス転移 / ファン・ホーベ異常 / 密度汎関数法 / 赤外分光 / 電子線重合 |
Research Abstract |
本研究では、加速電圧を3-10 kVの範囲で変更可能な電子銃を用いてC_<60>分子における電子線重合反応に基づいた新しいトポロジカルナノカーボンの創製を目的とし、研究を行った。 本年度ではまず加速電圧3kVの電子線で重合したC_<60>ポリマーの構造について実験で観測した赤外分光スペクトルと理論計算から得られた赤外スペクトルとを比較した。その結果、C_<60>分子はPO4,PO6といったC_<120>構造異性体の節面構造を最小構造とした中間体を経て、最終的にPO8構造異性体の節面構造に近い構造が周期的に配列したポリマーを形成するという結論が得られた。 続いてC_<60>薄膜に電子線照射した際に赤外分光スペクトルで得られる非常に強烈な2本のピークの起源について考察し、PO8構造異性体の節面構造が周期的に一次元配列した際に、ファン・ホーベ異常によってこのような強烈なピーク強度の増大が起こることが物理的に妥当であることも確認された。 更に、電子線照射したフラーレン膜について、低温域における赤外分光スペクトルを観測したところ、50K以下で新たにピークが出現したことが確認された。このフォノンモードについて検討したところ、ここで現れたピークはパイエルス転移に伴う電荷密度波に由来するフォノンモードであることが示唆された。 これに続き加速電圧を3-7 kVまで変化させて、電子線照射したC_<60>膜の赤外分光スペクトルがどのように変化するかについて調べた。この結果、加速電圧7kVまでは赤外分光スペクトルに大きな変化が見られない事が確認された。以上の事から、C_<60>膜に加速電圧が3-7 kVまでの電子線を照射した場合PO8の節面構造を最小単位としたピーナッツ型フラーレンポリマーが形成されると考えられる。
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Research Products
(4 results)