2010 Fiscal Year Annual Research Report
サーンキヤ二元論思想における認識論と解脱論の融合―『論理の灯火』解読を踏まえて
Project/Area Number |
09J09635
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
近藤 隼人 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | インド哲学 / Yuktidipika / Samkhyatattvakaumudi / Samkhya / サーンキヤ / ユクティディービカー / 知覚 / 映像説 |
Research Abstract |
本年度は、イーシュヴァラクリシュナ(4-5c)著『サーンキヤ頌』(Samkhyakarika,SK)に対する注釈書『論理の灯火』(Yuktidipika,YD)(ca.680-720)における認識論解明の一端として、SK第5偈の知覚定義に対する解釈に焦点を当てた。その解明に対する方法論としては、同じくSKに対する注釈書でYDより後代のヴァーチャスパティミシュラ(10世紀)著『サーンキヤ[二十五]原理の月光』(Samkhyatattvakaumudi,STK)における知覚定義の解釈をYDの記述と比較することで,YDの知覚論の特質を浮き彫りにした。その結果、YDとSTKいずれもSKの知覚定義に対してテキスト面も含めてほぼ同様の語義解釈を示しているのみならず、STKはYDにおける解釈上の不備を是正し、より合理的な解釈を施している。この両文献の見解が、現存する他のSK注釈書に見られないことを考慮に入れれば、少なくとも知覚論に関してSTKはYDを知った上で、それを批判的に継承発展したことが推測される。この成果を論文にしてまとめたが、STKとYDの共通点は如上の知覚定義解釈だけではなく、認識手段(pramana)・認識結果(pramanaphala)論や「映像説」と呼ばれる一種の誤知論においてもその共通性は窺い知れる。この事実はYD解読にはSTKの解読も不可欠であることも示しているので、この成果はサーンキヤ思想史におけるYDの位置づけを知る上でも重要な一基盤となりうると考えられる。また、二元論的世界観を奉じるサーンキヤ学派では一般に両元の識別知を獲得することで解脱が得られるとされているが、YDでは正しい認識手段による認識以外の思惟が解脱に資するとされており、その意味ではYDはサーンキヤ文献中でも一種特異な位置づけにあるといえよう。
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Research Products
(2 results)