2009 Fiscal Year Annual Research Report
エジプト社会のジェンダーと法識字:女性によるイスラーム言説の創出と利用
Project/Area Number |
09J09706
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
嶺崎 寛子 The University of Tokyo, 東洋文化研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 法識字 / ジェンダー / イスラーム言説 / ファトワー / エジプト |
Research Abstract |
本研究の目的は「ムスリマによるイスラーム言説の創出および利用の実態を、彼女たちの日常実践と法識字レベルとに注目して明らかにすること」である。そのため以降の研究では、イスラーム電話のファトワーの精査と、ムスリマの主体的活動について、主に法識字による差異に焦点を当てて分析する。 本年度は具体的には、1)「イスラーム電話」における、ムスリマたちのファトワー利用について論文を発表し、2)イスラーム言説をめぐる、ムスリマたちの多様な日常実践について、英語および日本語で学会発表を行った。英語発表は22年度にブリル出版より論文として出版される予定である。 1)では、選択性が高く、日常に密接している電話ファトワーの計量分析・内容分析を行った。注目すべきは、イスラーム電話には女性スタッフからなるクオリティコントロール部門があり、この部門が回答をチェックすることが、結果的にウラマーたちの女性嫌悪(misogyny)を緩和し、ムスリマたちに理解のあるファトワーを出すことにつながっていた点である。質問者たちも望みどおりの回答を得るべく努力していた。これらはファトワーを貰う、出すという行為そのものが、双方向の交渉の一場面であることを示唆する。これらを「生活の中のイスラーム言説とジェンダー:エジプト「イスラーム電話」にみるファトワーの社会的機能」論文にまとめた。 2)では、女性説教師たちを事例として、イスラーム言説に女性たちが積極的に関わりつつあること、その関わり方の程度は彼女たちのイスラーム法にかかる法識字と比例していることなどを文化人類学的手法によって明らかにし、学会発表を行った。 1)は今まで収集ができず、資料として用いられなかった生ファトワーを資料とした点に重要性が、それをもとに、イスラーム言説の利用について論じた前例のない研究である点に意義がある。2)は女性たちの主体的な宗教的実践にグラスルーツから迫った点に意義と独創性がある。
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Research Products
(4 results)