2009 Fiscal Year Annual Research Report
非分割財市場における安定な行動基準に関する研究-理論と応用
Project/Area Number |
09J09708
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
河崎 亮 Tokyo Institute of Technology, 大学院・社会理工学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 非分割財 / (強)安定性 / コアと強コア / 動学 / パレート効率 |
Research Abstract |
本研究では、非分割財市場において取引が繰り返し行われる事が起こりうる状況を考え、そのモデルの安定性の概念について考え直す。非分割財の取引市場のモデルは、Shapley and Scarf (1974)により定義され、そこでは、各個人はそれぞれ異なる非分割財を一単位初期保有として所持し、その財を交換し合う事を想定している。非分割財を考える重要な理由として我々の社会において取り扱われている財は、殆ど分割が不可能である。 主な先行研究においては、静学的な状況のみを想定し分析を行っている。即ち、プレーヤーたちは、一回限り取引が行われる事を想定していて、場合によっては、あまり応用が利かない。しかし、Roth and Postlewaite (1977)により従来適用されている解概念であるコアは、静学的には一種の安定性を満たすが、動学的には安定ではないことを示している。彼らにより「安定性」は定義されたが、パレート効率的であるとは限らない事が知られている。 今年度発表したKamijo and Kawasaki (2010)では、「強安定性」という従来の安定性をより強くした概念を提唱し、その解概念の性質について調べた。その結果、(1)「強安定」な配分は必ず存在し、(2)強安定の配分の全体はパレート効率的な配分全体と一致し、(3)様々な動学的なプロセスにより達成されうる事を示した。この結果は、ある一種の厚生経済学の定理と見なすことができ、理想的な条件の下では、繰り返し取引が行われるのであれば、最終的には「強安定」で効率的な配分に行き着く事を示した。
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Research Products
(6 results)