Research Abstract |
本研究では,扁平ヘマタイト粒子からなる高濃度サスペンション系を対象に,熱力学的平衡状態における内部構造発現現象について,擬2次元モンテカルロ・シミュレーションを行うことにより詳細に検討した.具体的には,相転移現象について定量的な評価を行うため,ネマチック秩序パラメータならびに磁化曲線の評価を行った.系に対して垂直に強磁場を印加した場合,体積分率が比較的小さい領域では,ネマチック秩序パラメータは体積分率が上昇するにつれて顕著に増加せず,系の内部構造は等方的内部構造となる.一方,体積分率が大きくなると,微小な体積分率の変化により相転移が生じ,ネマチック秩序パラメータは顕著に増加することを明らかにした.一方,系の面内方向に磁場を印加した場合,弱い印加磁場でもレンガ壁状構造が形成される.さらに,磁化曲線とLangevin関数の比較を行い,印加磁場が弱い場合,系にコラム状クラスタが形成され,印加磁場の増加に伴いレンガ壁状構造が系全体に形成されることを定量的に明らかにした. 針状ヘマタイト粒子分散系の理論予測に基づく逆磁気粘性効果について実験により検証を行った.具体的には針状ヘマタイト粒子を調製し,母液をグリセリン水溶液とする針状ヘマタイト粒子分散系を作製した.さらに,コーンプレート型粘度計およびヘルムホルツコイルを用いて,せん断流および一様印加磁場中における針状ヘマタイト粒子分散系の粘度測定を行い検討した.印加磁場中における針状ヘマタイト粒子分散系の粘度は,磁場を印加する前の粘度よりも減少する.また,印加磁場の増加にともない,逆磁気粘性効果は増加する.一方,せん断流の影響が支配的になると,逆磁気粘性効果は減少する.この針状ヘマタイト粒子分散系の逆磁気粘性効果は理論解析に基づく結果と傾向が一致し,逆磁気粘性効果の実験的検証に成功したといえる.
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