2009 Fiscal Year Annual Research Report
文理解の認知メカニズムに確率論的予測と構造処理負荷が及ぼす影響の実験的検討
Project/Area Number |
09J09772
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
佐藤 淳 Hiroshima University, 大学院・教育学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 文処理 / 関係節 / コーパス調査 / 頻度 / 自己ペース読文課題 |
Research Abstract |
関係節処理では、主語関係節が目的語関係節に比べ処理負荷が軽いことが分かっており、英語では処理の難易がコーパス上の出現頻度の大小に一致することが示されている(Reali & Christiansen,2007)。そこで、現代書き言葉均衡コーパスを用い、日本語の関係節の頻度を調査した。単純な関係節の分類を行った場合、主語関係節、目的語関係節の出現数に統計的に有意な差がなかった。関係節主要部の名詞の有生性に基づいて分類をし直した場合、有生名詞を主要部とするものは主語関係節が多く、無生名詞を主要部とするものは目的語関係節が多くなった。この結果に従い、無生名詞を含む関係節を用いた読文時間測定実験を行った。主語関係節が簡単であると分かり、日本語では有生性を考慮に入れても、コーパス上の頻度と処理負荷が必ずしも一致しないことが分かった。 また、関係節が談話上で果たす機能の違いが関係節間の処理負荷の差の原因となっているとする仮説もあるため(Roland et al.2008)、日本語の関係節機能が英語の関係節が持つ機能と似たものであるかをコーパスを用いて確認した。前述のコーパスから抜き出したデータから、主語・目的語関係節をそれぞれ100例ランダムに抜き出し、前文脈上に同様とみなせる名詞が登場しているか調査した。結果、主語関係節の場合、登場30例、未登場70例、目的語関係節の場合、登場80例、未登場20例となり、英語とよく似た結果が得られた。そこで、関係節内の名詞が主語として登場する文脈と登場しない文脈を用いて読文時間測定実験を実施した。しかし、英語とは異なり、統計的に有意な差はなくならず、変わらず主語関係節が簡単なことが示された。 本年度は2つの重要仮説の検討を通し、日本語環境節処理においては頻度が大きな影響を与えない可能性を示すことができた。2言語間に存在する違いを説明することが今後求められる。
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Research Products
(6 results)