2009 Fiscal Year Annual Research Report
高量子効率・高偏極度・超高輝度スピン偏極電子源の開発
Project/Area Number |
09J09783
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
金 秀光 Nagoya University, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | スピン偏極電子源 / TEM観察 / 欠陥 / 超格子の層厚変調 |
Research Abstract |
我々はGaAs/GaAsP歪み超格子構造をベースにスピン偏極電子源用フォトカソードの開発を行ってきた。本研究の中で、用いる基板に偏極度が大きく依存することが分かった。具体的には、GaAs基板上では90%以上の偏極度が得られるのに対して、同じ超格子構造をGaP基板上に作製すると偏極度は60%までに低下した。また、GaP基板上にGaAs中間層を導入することで偏極度が90%まで回復した。 TEM観察により、各基板上超格子試料に導入される転位の種類と密度を調べ、偏極度との関連を調べた。貫通転位とミスフィット転位に関してはいずれの試料でも同程度の密度であった。積層欠陥に関しては、GaAs基板とGaP基板GaAs中間層上超格子試料には、10μmあたり10~15個観察されるに対して、GaP基板上試料では積層欠陥が観察されず、その代わりに超格子層の厚さが変化している領域が観察された。また、AFMによる表面観察によりこれらの層厚変調が試料全体の30%ほど存在することが確認された。ところで、ハーフメタル材料からGaAs系半導体にスピン電子を注入する研究において、欠陥による非対称ポテンシャルによるスピン緩和が報告されているが、10μmあたり50個の積層欠陥でも80%の偏極度が得られ、本研究の試料の積層欠陥の密度では偏極度への影響は小さいと考えられる。偏極電子源用超格子構造では、価電子帯での重い正孔バンドと軽い正孔バンドを分離し、励起光のエネルギーを制御して、一つのバンドのみから片方のスピン電子を励起する。しかし、層厚変調している場所では層厚の変化による超格子のバンド構造が揺らぐ。GaAs層とGaAsP層の厚さよりバンド構造を計算してみると、バンドギャップの揺らぎの幅は、価電子帯の分離幅より大きく、スピン電子の選択励起ができず、偏極度が低下する大きい原因と考えられる。
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Research Products
(8 results)