2010 Fiscal Year Annual Research Report
高量子効率・高偏極度・超高輝度スピン偏極電子源の開発
Project/Area Number |
09J09783
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
金 秀光 名古屋大学, 高等研究院, 特任助教
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Keywords | 電子源 / 偏極度 / 輝度 / TEM観察 |
Research Abstract |
我々はGaAs/GaAsP歪み超格子構造をベースにスピン偏極電子源用フォトカソードの開発を行ってきた。本研究の中で、用いる基板に偏極度が大きく依存することが分かった。具体的には、GaAs基板上では90%以上の偏極度が得られるのに対して、同じ超格子構造をGaP基板上に作製すると偏極度は60%までに低下した。また、GaP基板上にGaAs中間層を導入することで偏極度が90%まで回復した。 スピン偏極電子源用超格子構造では、価電子帯での重い正孔バンドと軽い正孔バンドを分離し、励起光のエネルギーを制御して、一つのバンドのみから片方のスピン電子を励起する。しかし、周期的な領域では超格子層の厚さがGaAsとGaAsPがそれぞれ4nmに制御されているのに対して、層厚変調している領域ではGaAs層の厚さが1~7nm変化するに時、GaAsP層の厚さは7~2nm変化する。このような異なる層厚から成る超格子層のバンド計算をModel solid理論とKronig-Pennyモデルを用いて行った。超格子構造の価電子帯ミニバンドの分離幅は、層厚変調の領域では60~70meVであり、周期的な領域により減少した。続いて、超格子構造のバンドギャップに注目してみると、層厚変調の領域では周期的な領域より80~100meVほど小さくなっており、この変化は層厚変調の領域での価電子帯ミニバンドの分離幅60~70meVより大きい。そのため、周期的な領域で重い正孔ミニバンドから伝導帯ミニバンドヘスピン偏極電子を励起する際、層厚変調の領域では重い正孔ミニバンドのみからではなく、軽い正孔ミニバンドから逆向きのスピン偏極電子が励起され、スピン偏極度が低下する大きい原因と考えられる。
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Research Products
(5 results)