2009 Fiscal Year Annual Research Report
量子ホール系におけるランダウ準位間励起のテラヘルツ偏光分光
Project/Area Number |
09J09833
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
池邊 洋平 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | テラヘルツ / 量子ホール効果 / 偏光測定 / 2次元電子系 |
Research Abstract |
量子ホール効果は低温、高磁場下の2次元電子系において生じる、電子の局在現象に起因する現象である。この局在現象がランダウ準位の励起を生じるテラヘルツ周波数領域において伝導にどのような寄与を示すのか明らかにするために、本年度では量子ホール系に対し詳細なテラヘルツ偏光分光測定を行った。偏光回転角はホール伝導度に対応し、局在効果を議論することを可能にする。 試料にはGaAs/AlGaAs単一ヘテロ構造における2次元電子系(東京大学大学院理学系研究科岡本研究室提供)を用いた。本試料は高磁場において高いサイクロトロン共鳴周波数を持つ。このためまずは検出領域の広帯域化を測った。具体的には発生結晶、検出結晶としてそれぞれp型InAs、ZnTe[110]を用い、広い帯域で強度を確保した。また磁場印加用の超伝導マグネットにテラヘルツ電磁波を入れるための窓材を、石英からより高周波数での吸収が少ないポリマーに変えた。これにより0.3から2.5THzの広い周波数領域における高安定な測定を可能にした。 実験で得られた偏光回転角スペクトルはランダウ準位の占有数2近傍において自由電子的なDrude Modelからのずれを示した。さらに偏光回転角から決定されたホール抵抗は量子ホール的なプラトー構造を示した。このことはランダウ準位間遷移を生じる高周波数領域においても局在・非局在状態が伝導に寄与することを示唆している。また観測された低周波数領域の偏光回転角は量子ホール効果に従い、微細構造定数で表される値に量子化されることを明らかにした。これらは森本らの理論計算による予測[Phys.Rev.Lett.103,116803(2009)]と一致する結果である。
|
Research Products
(3 results)