2009 Fiscal Year Annual Research Report
日本古代の彩色材料の歴史的変遷と呼称の変遷について
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09J09877
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Research Institution | National Research Institute for Cultural Properties, Tokyo |
Principal Investigator |
國本 学史 National Research Institute for Cultural Properties, Tokyo, 企画情報部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 色彩 / 彩色 / 色材 / 彩色材料 / 顔料 / 染料 / 美学美術史 / 色彩文化 |
Research Abstract |
研究計画に基づき、各地フィールドワーク・染色実験などの実地研究、資料の収集・研究を行った。材料と色名との関係性の観点から、日本古代期の色名変化の時代的変遷について、混同・誤認の問題を主眼に据えて研究した。結果、色名における、染料・顔料の材料の未分類、同名異材・同材異名の混乱状態が判明した。加えて、古代期以降の材料色名・系統色名・形態形容色名等色名の混在と変容についても情報整理を行う道筋ができた。 さらに本年度重視したのは、染色の色材調査である。伝統的な技法・材料による染色工程における、古代と現代の材料の差異を現場での確認作業を含めて比較調査した。結果、いわゆる伝統的な材料と色名との関係性について再考察が必要であることが分かった。「伝統的」、と言われながらも、現代の材料と近代前の材料は大きく異なることがほとんどで、現今では近代以降に流入した化学・合成染料が主として使用されている現状について情報を整理した。加えてそれらの材料は、伝統的な日本美術の材料・技法にも取り入れられていることから、制作・補修に関わる現場においても、色の意図しない混同・誤認が起こる可能性にも留意すべきと認識し、今後の調査の必要性を確認した。時代的に受け継がれてきた色名の誤認・混同の問題が、現代に至るまで影響を及ぼしている点が明確になった。 当該の研究成果について、受け入れ研究機関の部内研究会で発表(「彩色材料名称形成過程における染料と顔料の混在について」於東京文化財研究所2010年1月)した。また、平成22年5月に開催される日本色彩学会第41回全国大会(於長良川国際会議場)でも、「日本の伝統的彩色材料と色名における相違の問題について」と題して発表する。本年度の研究成果と来年度以降の研究計画を併せ、現在の彩色材料・色名における混乱や誤認の是正に繋げたい。
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Research Products
(3 results)