2011 Fiscal Year Annual Research Report
日本古代の彩色材料の歴史的変遷と呼称の変遷について
Project/Area Number |
09J09877
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Research Institution | Independent Administrative Institution National Institutes for Cultural Heritage Tokyo National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
國本 学史 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 企画情報部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 色彩 / 彩色 / 彩色材料 / 色名 / 色材 / 色彩文化 / 美学美術史 / 色彩学 |
Research Abstract |
平成22年度に続き、建築物・染織品の色と色材、染料の活用等、さまざまな場に見られる色について、継続して研究を行った。特に平安期以降における、かさね色目の成立と展開について、かさね色目が突発的に、あるいは画一的に成立した配色法則とは異なることを明確にした。研究成果は、「かさね色目形成における美術・文化的背景について」と題して、日本色彩学会第42回全国大会(於千葉大学)にて口頭発表を行った。また、青の歴史的展開について「日本の青色について-青の歴史的変遷-」と題して、東京工芸大学芸術学部紀要『芸術世界』第18号に論文を掲載した。 さらに、近代以降の色材についても考察を加え、明治維新に伴って、いわゆる「西洋化」として画一的にとらえられがちな色材・色名の変化が、単なる急激な転換ではなく、歴史的に展開してきた色材・色名についての知識・経験と、新しい「色」の工夫、色彩学的知識といった要素があって成されたことを整理した。こうした、歴史的な展開と、当該の時代における急激な変化の実体、様々な周縁要素の情報について総合的に視点をもって研究した内容はなく、本研究によって近代の色彩文化における基礎的情報の整理・蓄積に繋がることを目指して情報の収集に努めた。研究成果の一部は、「日本近代における色材と色名の展開」と題して、日本色彩学会第43回全国大会(於京都大学)において口頭発表を行った。 工業生産や伝統工芸品制作の場とも関わりが深い近代の色材の展開については、本年度は特に漆工芸分野において研究と制作の両方に経験のある研究者による教示を得た。実験的に色材と漆工芸技法の実践的研究を行い、漆工芸における色材の活用についても研究を加えた。 文献・遺物の調査と実験的な研究成果を合わせて、今後の日本の伝統産業・保存修復の現場・一般的な色彩文化研究に寄与できるよう、研究を継続して行きたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
古代期からの色材・色名の変遷を辿ると同時に、近代以前より大きく変化すると言われる近代の色についても視点を持った。それにより、近代以降、伝統産業・工芸・工業といった分野・領域での色の転換にも、「伝統的」な色材・色名への知識・慣習の関わりがあることが明らかになった。また、明治維新期の洋風化の一端として一義的に考えられがちな色の変化が、近代以前の知識に加え、化学・合成染料の輸入と開発、近代の色彩学の流入といった諸要素があって成された、という背景についても明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
日本古代の彩色材料の歴史的変遷と呼称の変遷については、引き続いて文献や美術品、材料遺物等の調査・研究を続ける。加えて、漠然と捉えられがちな近代以降の色の変化についても、歴史的な知識・新しい色材・新しい色名・新しい色概念・色彩学・色彩教育、といった諸要素を見ることで、どのような背景があったのか歴史的事実を明確にし、情報をまとめて行きたい。それにより、現代の色材・色名あるいはJIS慣用色名と歴史的な色材・色名との混乱を解消し、今日の伝統産業や美術品の修復現場における色材・色名情報の活用や、日本の色彩文化研究の再構築に寄与したい。
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Research Products
(4 results)