2010 Fiscal Year Annual Research Report
14-15世紀の存在一性論に関する研究:「存在」をめぐる論争とその思想史的意義
Project/Area Number |
09J09911
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中西 悠喜 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ファナーリー / タフターザーニー / イブン=スィーナー / 哲学的神学 / 存在一性論 / 形象 / 存在論 / 存在と何性 |
Research Abstract |
第2年度にあたる本年度は、資料の収集とテクストの分析を重点的に行った。特にテクスト分析に関しては、ファナーリー(1431年没)の一連の議論において重要な役割を担う「形象(mithal)」という概念に焦点を当て、彼の『親密の灯Misbah al-uns』とそのソースの1つである可能性が指摘されている『プラトン的知性的形象al-Muthul al-'aqliyah al-Aflatuniyah』(13世紀後半から15世紀初頭にかけて成立)と呼ばれる著者不詳の論考とを主軸に据えて行った。その成果が「『プラトン的知性的諸形象』に見る形象論の諸相:ファナーリーによる絶対存在の存在証明との関連をめぐって」(学会発表)である。またその後は形象論とのつながりも予測される「非存在者(ma'dum)」という概念に焦点を当て、存在と非存在者をめぐるファナーリーとタフターザーニーとの間の「論争」の内実を明らかにした。その成果が「ファナーリー存在論における存在と非存在者:存在の存在証明と必然性の証明をめぐって」(論文)である。これらの過程を通じて、イブン=スィーナー以降の哲学的神学者たちとファナーリーとの関わりも、少しずつではあるが明らかになってきている。現在は前者の学会発表の改訂作業に集中しており、次年度はこの作業を本年度行うことができなかった写本調査と並行して更に継続することで、その成果を論文として発表することを目指す。
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Research Products
(2 results)