2009 Fiscal Year Annual Research Report
14-15世紀の存在一性論に関する研究:「存在」をめぐる論争とその思想史的意義
Project/Area Number |
09J09911
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中西 悠喜 The University of Tokyo, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | イスラーム / ファナーリー / タフターザーニー / イブン=スィーナー / イブン=アラビー / 存在一性論 / 存在論 / 存在と何性 |
Research Abstract |
初年度にあたる本年度は、資料の収集とテクストの分析を重点的に行った。資料に関しては、特に論理学書『イーサーグージーIsaghuji』と『太陽の書簡Al-Risalah al-Shamsiyah』に対するファナーリー(1431年没)の注釈の写本を、一部実際に入手することができた。本年度は写本調査を実施することができなかったが、来年度以降これを実施することによって、より多くの写本を参照することが目指される。テクスト分析に関しては、『親密の灯Misbah al-uns』を主軸に据えて行った。特にタフターザーニー(1389/90年没)の批判に対する反駁において重要な概念となる「関係」(nisbah)に焦点を当てて分析を行い、それが担う役割の一端を明らかにすることができた。その成果は「ファナーリー存在論における<関係>:<存在>の内在/超越をめぐって」(学会発表)、及び「ファナーリー存在論における<関係>:存在の必然性の証明をめぐって」(論文)として発表した。またこれらの発表後は、ファナーリーの一連の議論において重要な役割を担うもう一つの概念「形象」(mithal)の分析に着手した。現在はこの作業に集中しており、ここからタフターザーニーの批判のみでなく、彼に先行する神学者・哲学者たちの議論をも視野に入れる必要性が浮き彫りになってきた。次年度はこの作業を更に継続し、その成果を論文として発表することを目指している。
|
Research Products
(2 results)