2009 Fiscal Year Annual Research Report
現代におけるムスリム女性のヴェールとイスラームの教義・思想に関する比較研究
Project/Area Number |
09J09926
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
後藤 絵美 The University of Tokyo, 東洋文化研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | イスラーム / ヴェール / 聖典 / 女性 / エジプト / 教育機関 / 裁判所 / 現代 |
Research Abstract |
本研究は、聖典を根拠に行なわれる強制的なヴェール着用/非着用について、主にイスラームの教義・思想との関連から考察するものである。その際、さまざまな集団による強制が考え得るが、本研究では、もっとも広範囲に影響を及ぼすと思われる「国家による強制」に注目する。具体的には、現代エジプトにおけるヴェール着用の一部制限、現代サウジアラビア・革命後のイランにおける一定の形のヴェール着用の義務化を事例に挙げ、それぞれについて、(1)どのような主体(機関や組織)が、(2)どのような根拠(宗教的・世俗的根拠)を提示しつつ、(3)どのような手続きを経て、(4)どのような形のヴェールの着用/非着用を強制し、それが(5)ヴェールを着用する主体である女性にどのような影響を与えてきたのか、という五つの観点から考察するものである。 本年度は、現代エジプトの事例を扱った。エジプトでは1980年代以来、ニカーブ(顔を覆うヴェール)の着用が主に教育現場において問題視されるようになり、個々の機関のレベルで着用の制限が加えられるようになった。1994年には当時の教育大臣が、公立・私立小中高校の制服を定めた制服令(1994/5/17,QarUr wizUrO no.113)を発布し、その中で女子生徒のニカーブ着用を全面的に禁止した。本研究では、1989年から2007年までに行なわれたニカーブ着用の制限をめぐる訴訟に対する高等行政裁判所・最高憲法裁判所の判決と、それにまつわる議論について、エジプト国立図書館、公文書出版協会、国家評議会において資料収集を行ない、そこで入手したものについて上記の五つの観点から検討を行なった。
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