2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J09952
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
酒井 麻千子 東京大学, 大学院・学際情報学府, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 著作者人格権 / 同一性保持権 / 明治時代の著作権法 |
Research Abstract |
著作者人格権の1つである同一性保持権の保護範囲について検討を行った。著作物を創作・利用する際に慣行としてなされる修正や添削などの行為が同一性保持権の侵害にあたるか否かにつき見解が分かれているが、本検討においては、他者との間で「協調的で継続的な関係」が維持され、その中で当該添削行為等が慣行として共有されている場合にはその慣行に沿う判断をすべきであると結論づけた。著作物は著作者だけのものではなく、他者の享受や利用をその前提としていることから、添削や修正等の著作物の同一性を損なう行為について、他者との間で共有されている限りこれを認めるという点において、これまでの学説とは異なった視点から考察を加えたものといえる。 また、日本における「著作者人格権」の存在意義についての検討を行った。具体的には、1899年旧著作権法及び1970年の現行著作権法の立法過程における議会資料と、20世紀初頭から現在に至るまでの裁判例や学説を載せた論文・文献について詳細に検討を加えた。これにより、著作権法が制定された当時、ヨーロッパやアメリカにおいて既に制定されていた(1880年代までの)法律や学説をもとに議論がなされていたこと、著作権の性質を財産権と人格権との混合した権利として、既に人格権について一定の考察がなされていたこと、また著作者や出版者等の著作権に関わる人々につき、西洋文化の紹介や吸収が急務だった明治時代の状況において、特に翻訳に関する議論が広くなされつつ法案が形成されていったいう点が明らかになった。
|
Research Products
(1 results)