2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J09952
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
酒井 麻千子 東京大学, 大学院・学際情報学府, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 著作権 / 著作者人格権 / ドイツにおける著作権法制定 |
Research Abstract |
18~19世紀後半にかけて、ドイツ国内において制定された著作権関連の法律を検討すると共に、特に19世紀中頃から盛んになる著作者人格権に関する学説史の検討を行った。日本では入手困難な貴重文献が多数あったため、ドイツ・ミュンヘンに9月から数週間滞在し、資料収集にあたった。また当研究所に所属する著作権法研究者から、ドイツ19世紀当時の学説状況に関してヒアリングを行うことができた。 ドイツにおける19世紀後半の著作者人格権学説史研究について、ドイツでは1950年代と1980年代以降の2回トレンドがあった。1950年代の研究では著作者の「創作活動をする者」という特殊性に着目して学説検討を行うものが多かったが、1980年代以降の研究においては、これに加え作品の経済的価値や政治的な利用価値の点から考察を行うものが現れている。日本においては1980年代以降の研究成果の紹介が少なく、資料収集やヒアリングを通じて知見を得ることができた。 また、作品の経済的価値や政治的な利用価値に着目する視点をもとに、帰国後更なる検討を進めた結果、19世紀の著作者人格権理論を検討する上では、著作者の保護の視点だけでなく、作品を享受する市民や、両者を仲介するところの出版者、立法者など多数の利害関係者の存在を意識し、全体的な視点から検討を行う必要があり、この視点を日本との比較において有効に用いるべきとの示唆を得た。
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