2009 Fiscal Year Annual Research Report
生成文法理論に基づく、空所を含む埋め込み節の統語及び意味の研究
Project/Area Number |
09J09990
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
稲田 俊一郎 The University of Tokyo, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 生成文法理論 / Operator-variable構造 / 関係節 / 比較節 / 形式名詞と非顕在的名詞句 / 統語・意味インターフェイス / 線形順序化 / 語彙・形態特性 |
Research Abstract |
近年のミニマリスト・プログラムに基づけば、人間の演算系である統語システム自体に言語間変異はない。よって、Operator-variable構造を含む埋め込み節構造の統語・意味的な様々な言語間変異は、語彙的・形態的な変異、統語構造の外在化の方法の相違に起因する。本研究では今年度、意味機能からそれぞれ関係節・比較節と呼ばれる節について考察し、英語で「副詞節」として表出する比較が、日本語では関係節構造(名詞句修飾構造)によって表されうることを明らかにした。与えられた語彙(概念とカテゴリの組み合わせ)の変異によって、統一的な演算系から様々な言語間変異が生み出される人間言語のメカニズムの一端を明らかにしたと言える。 論文1(次ページ11参照、以下同様)は、比較の意味を持つにも拘らず関係節構造を持つCP-相対名詞「前」、「半分」の基点を定める修飾節(Okutsu(1974),Ishii(1991))-の妥当な統語構造を初めて明らかにし、Linguistic Research 25に研究論文を発表したものである。 発表1及び論文2では、非顕在的主名詞を持つ関係節についての研究を行った。人間の認知能力を反映したPPの機能範疇の階層構造のカートグラフ(Zwarts(1997),Watanabe(2008a)他)に基づき、日本語の語彙特性と合わさって関係節構造が比較の意味を表し得ることを明らかにした。ハワイ大学で開催された国際会議19th Conference on Japanese/Korean Linguisticsにおいて発表し、その発表内容は研究論文として掲載予定である。 発表2では、統語構造の外在化(線形順序化)に関する一般的な制約に、本研究対象の産出のメカニズムが従っていることを明らかにした。この研究成果は、神戸大学で開催された第139回日本言語学会大会において発表した。
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Research Products
(4 results)