2010 Fiscal Year Annual Research Report
ソニア・ドローネーのイメージ戦略―1920年代フランスにおけるギャルソンヌの表象
Project/Area Number |
09J10018
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
朝倉 三枝 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | ソニア・ドローネー / ギャルソンヌ / 1920年代 / ファッション / フランス |
Research Abstract |
本研究は1920年代にパリのモード界に進出した画家のソニア・ドローネーのイメージ戦略を、同時代に典型的な女性像「ギャルソンヌ」との関連から解明しようと企てるものである。本年度はまず、1920年代のモード雑誌の通読を行い、ギャルソンヌという女性像の形成過程を明らかにすることを試みた。その中で、1924~25年頃からイラストや写真、マネキンなど、さまざまな表現媒体において、戦前まで理想とされたふくよかで成熟した女性像に代わり、ほっそりと中性的な女性像が見られるようになったこと、さらにそのイメージがモードに浸透していく中、戦後登場した自由で活動的な女性たちの精神性も付与されていったことが判明した。そして、当初は革新的な「新しい女」として現れたギャルソンヌの女性像が、1920年代末までに、この時代の典型的な女性像として定着していく経緯を明らかにした。続いて本研究では、ソニアのメゾンを紹介する雑誌・新聞記事や商業広告に見出される女性像を抽出し、それらをギャルソンヌの女性像と比較することで、この画家の意図を浮き彫りにすることを試みた。その結果、ソニアが1924年にメゾンを設立した当初から、他のデザイナーに先駆け積極的にモードに現れたばかりのギャルソンヌのイメージを取り込み、自身のモデルの革新性を強調していたという結論を得た。それらの調査・分析と並行して、本年度は2008年にお茶の水女子大学に提出した博士論文「ソニア・ドローネーの服飾芸術一1910~20年代ヨーロッパ前衛芸術とモードの交流」に大幅な加筆・修正を加え、2010年9月に単著『ソニア・ドローネー服飾芸術の誕生』(ブリュッケ)を出版した。ソニア・ドローネーの衣服制作に焦点を当てた研究は未だ稀少であるため、既存の研究に新たな視座を提示することができたものと思われる。
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