2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J10037
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大清水 裕 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 古代史 / 「碑文習慣」 / 「3世紀の危機」 |
Research Abstract |
今年度は、前年度から引き続いて夏までパリを拠点として研究し、9月に東京に移った。当初の計画に従って、フランス滞在中は各地の遺跡の現地調査を行い、帰国後は北アフリカやイタリアの碑文についての状況を整理し、学会での発表も行った。 フランスでは、5月にルーブル美術館所蔵の碑文2点を特別に許可を得て検分する機会を得た。これらの碑文については、平成22年11月17日に開催された第108回史学会大会西洋史部会で「マクシミヌス・トラクス政権の崩壊と北アフリカーテベステ出土碑文から見た『テュスドゥルス革命』の意義-」として報告をおこなっている。この他、フランスでの滞在中には、フランス国内をはじめ西欧各地の遺跡や博物館をめぐり、碑文史料を実際に見てまわるよう努めた。平成23年3月にはアルジェリアも訪問し、現地の状況を知ることができた。碑文の文字テクストだけではなく、その形状や発見場所などの情報に基づいて史料の解釈を行い、「碑文習慣」の衰退について考察をすすめている。 当初予定していたレプティス・マグナの遺跡に関しては、2点、大きな進展があった。一つ目は、I. Tantillo(ed.), Leptis magna:una citta e le sue iscrizioni in epoca tardoantica, Cassino,2010が出版されたことである。タイトルにもある通り、古代末期のレプティス・マグナの碑文を集めた碑文集成である。2009年にネット上で公開されたInscriptions of Roman Tripolitania(http://irt.kcl.ac.uk/irt2009/) の情報と合わせ、レプティス・マグナの碑文の置かれている現在の状況について多くの情報を得ることができた。もう一点は、そのInscriptions of Roman Tripolitaniaの編者のお一人J.Reynolds博士にお会いできたという点である。博士は10月に来日されたが、その折はゆっくりとお話しできなかった。しかし、12月にイタリアで開催された学会L'Africa Romana XIXで再度お会いし、5日間におよぶ会期中、様々な示唆を受けた。平成23年3月末現在、民衆蜂起と政権側の弾圧、多国籍軍の軍事介入を経て、リビア情勢は混とんとしているが、出来る限り今後も調査を進めたい。
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Research Products
(6 results)