2011 Fiscal Year Annual Research Report
東アジア地域における不動明王を含む集合明王像の形成と展開
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09J10055
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Research Institution | Shuchiin University |
Principal Investigator |
見田 隆鑑 種智院大学, 人文学部, 特別研究員(SPD)
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Keywords | 五大明王 / 不動明王 / 軍荼利明王 / 金剛夜叉明王 / 大威徳明王 / 集合明王 / 空海 / 円珍 |
Research Abstract |
平成23年度は、五大明王像および集合明王を構成する明王像を中心に、過去2年に調査が及ばなかった作品、本年度、新たに所在情報を得た作品について実地調査を進め、情報を網羅的に収集することに努めた。初年度が軍荼利明王、金剛夜叉明王の調査が中心となった為、今年度は単独像として残る大威徳明王像の調査が多くなった。本年度の調査作品の中には、未指定の作品や改作が加えられて名称が別の尊像に変化している作品が存在したことから、国内には未だ情報公開されていないものをはじめ、調査対象がなおも存在する可能性を強く感じた。また、本年度は愛知県史、豊田市史の調査と関連して、これまで調査に及んでいなかった明王像を調査する機会にも恵まれた点は幸いであり、これらの成果も今後、刊行書籍の中で触れていくこととなっている。本年度は、採用期間である3年間の調査を踏まえ国内の五大明王に関しては「平安時代における五大明王の受容と展開の諸相-特に彫像作例を中心に-」と題する論文をまとめたが、実作例の分類・整理が主となり、今後、歴史的な裏付けも踏まえた個別の成果報告の必要性を感じている。また本年度は、円珍請来の「五菩薩五忿怒像」の五大明王像の表現を中心に考察を加えた「円珍請来「五菩薩五忿怒像」に関する一考察-特に五忿怒尊の表現について-」と題する論文が刊行したが、本年度刊行予定の論文「松島五大堂の五大明王像に関する一考察」は刊行予定がずれた為、現在印刷中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、当初東アジア全体の中での考察を計画していたが、実際には国内調査の中で未調査の作例、新たに確認した作例が存在した為、その調査と検証に焦点をあてる形となった。その為、当初の目的を十分に達成しているとは言えないが、国内の作例に関して網羅的に情報を収集し、整理できた点では今後の研究の進展の上での土台を固めることにはつながったのではないかと思われ、その成果の一部も論文として発表することができた。特に、国内の作例の中にも尊名同定が困難な尊像が未だ存在しており、集合明王の図像形成の検討の上で、解決していくべき新たな課題が見いだされた点で意味のあることであったと感じている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は彫刻作例が中心となったが、今後は絵画作例も併せて検討を加えて行きたいと考えている。このことで、未解決の尊像が解釈できることを期待するが、これまでもある程度の経軌の記述や白描図像などを踏まえた上で尊名同定を試みてきたわけなので、このような手法とは違ったアプローチを見いだしていかなければならないと考えており、その為の調査・資料収集を今後も引き続き行っていきたいと考えている。 また、本研究では情報の収集と整理、尊像の図像的な特徴からの分類や解釈を行ったが、個別の尊像に関して、各地域との関連性をはじめ、なぜそのような尊像がその土地に必要とされたのか、など検討すべき課題が残っており、図像解釈の視点から継続的に検討を加えていきたいと考えている。
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Research Products
(3 results)