2009 Fiscal Year Annual Research Report
ソヴィエト後期の散文作品とコンセプチュアリズム芸術におけるテクストの相互的研究
Project/Area Number |
09J10088
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
神岡 理恵子 The University of Tokyo, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | ロシア文化 / ロシア文学 / 現代美術 / コンセプチュアリズム / ソッツアート / ソヴィエト文化 |
Research Abstract |
今年度は、当初の計画通りロシア現代美術最大の展覧会「第3回モスクワ・ビエンナーレ」を訪れ、フィールドワークを実施した。ソヴィエト後期から活動するコンセプチュアリズムの芸術家、研究者、キュレーターたちをはじめ、現在活躍する若手芸術家も含む数多くの当事者たちと会い、聞き取り調査をしながら現在のロシア美術界の実態を把握することができた。この調査結果は「現代ロシアのアートシーン-グローバル化と「過去」のはざまで」という論文にまとめ、『ロシア・中欧・バルカン世界のことばと文化』(桑野隆・長與進編著、成文堂)に収録された。この論文では、過去の開催も含めたロシアのビエンナーレの様子と問題点、現代美術をとりまく環境とその変化(経済危機や政治体制の影響)、多様化する美術館(美術館に代わる展示スペースの登場、美術への投資)、作家やキュレーターたちの動向(近年強化されつつある検閲、政治や宗教の問題)、ソヴィエト後期から現代にかけて作家たちに共有されている問題意識などを論じた。この論は、実態があまり知られていないロシアの現代美術が、現在めまぐるしく変化するグローバルな現代美術の文脈でどのような位置にあるかを確認する点で重要性が高い。 また研究1年目の年度計画として、「戦後ソヴィエトの政治/社会史、文学/文化史の研究と整理」の実施を申請時から予定していたが、こちらは研究の一部を「1950年代の若者文化の伝播と現代における再受容の問題-ソ連の「スチリャーギ」をめぐって-」という論文にまとめた(『現代文芸論研究室論集れにくさ』第2号、東京大学大学院人文社会系研究科)。1950年代当時、ソ連の若者たちが外国から受容した文化が、その後のソ連社会でどのような文化に発展し、美術・散文の中にどう表現されていくかという今後の研究に繋げる上で意義ある研究となった。
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