2010 Fiscal Year Annual Research Report
光化学的酸化還元を利用するカーボンナノチューブの新規分離法
Project/Area Number |
09J10121
|
Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
信澤 和行 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | カーボンナノチューブ / 分離精製 / 遷移金属錯体 / 酸化還元 / 配位子交換 / 会合制御 / フラーレン / シクロデキストリン |
Research Abstract |
本研究では、カーボンナノチューブ(CNT)の光励起を介した酸化還元反応を利用して、任意のCNTだけを合目的に分離・精製することを目指した。任意のCNT異性体に対し、その電子準位に合う適切な電子供与体(D)および電子受容体(A)を可溶化剤とし、光励起が介在した電子授受によりその可溶化能を失うよう分子を設計する。これにより、電子状態依存的に特定成分のCNTを回収できると期待した。本年度ではまず、D分子としてCu(II)とバソフェナントロリンジスルホン酸(BPS)との1:2錯体が可溶化剤として適切であることを明らかにした。さらに、Cu(I)に対する配位能が高いバソクプロインジスルホン酸(BCS)の共存下で、Fe(II)による還元反応を行った結果、CNTと分子構造的に相互作用することができないCu(I)(BCS)_2およびFe(II)(BPS)_3錯体の生成によりCNTが完全に凝集した。凝集は還元反応を起点としているため、今後CNTの光励起を利用した還元反応を検討する上で、Cu(II)(BPS)_2錯体がD分子として有効である。 続いて、上述のような可溶化分子の立体構造の変化が、カーボンマテリアル分散状態に与える影響を評価するため、評価の容易なフラーレンC_<60>をターゲットとした可溶化を試みた。pHにより開閉機能を有する環状分子・シクロデキストリン(CD)を合成し、CDによるC_<60>の包接挙動を評価した。pHが中性域では、CDが開構造をとるためC_<60>と2:1錯体を形成したが、弱酸性になるとCDが閉構造をとるため、C_<60>がCDから離脱した。この結果は、C_<60>のような疎水性分子であれば、pHによりその包接を制御できることを示しており、例えば生体中における弱酸性環境場を特異的に認識して疎水性薬剤を放出できるシステムが構築できると期待される。
|
Research Products
(3 results)