2009 Fiscal Year Annual Research Report
光化学的酸化還元を利用するカーボンナノチューブの新規分離法
Project/Area Number |
09J10121
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
信澤 和行 Nara Institute of Science and Technology, 物質創成科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | カーボンナノチューブ / 分離精製 / 遷移金属錯体 / 酸化還元 / 配位子交換 / 会合制御 |
Research Abstract |
カーボンナノチューブ(CNT)は構造異性に伴って電子的性質を大きく変化させる特異な物質であり、その有用性からCNTの構造異性体分離について数多く検討されている。本研究では、CNTの光励起を介した酸化還元反応を利用して、ある特定の性質を有するCNTだけを合目的的に分離・精製することを目指す。具体的には、任意のCNT異性体を標的とし、そのHOMOおよびLUMO準位に合う適切な供与体分子(A)および電子受容体分子(D)をCNTの可溶化剤として用いる。すなわち、可溶化剤間の電子移動反応は、標的としたCNTの光励起が介在してはじめて可能になる。加えて電子を授受した際にその可溶化能を失うよう分子設計を施す。これにより、D分子およびA分子で可溶化されたCNTに光照射することにより、CNTの電子状態依存的にCNTの会合が促進し、特定成分のCNTを不溶物として抽出できることが期待できる。本年度ではまず、D分子の選定を行った。 光励起されたCNTから効率よくD分子に電子を渡すためには、CNTが一本一本に孤立した状態で分散している必要がある。また、D分子は還元されることによりCNTから脱離して可溶化能を失うような分子である必要がある。これらの要求に合致するD分子として、Cu(II)イオンと水溶性配位子であるバソフェナントロリンジスルホン酸(BPS)との1:2錯体を可溶化剤として選定し、このCu(II)(BPS)_2錯体によるCNTの水溶化を試みた。その結果、Cu(II)(BPS)_2錯体は、一般的なCNT可溶化法である超音波を用いてCNTを高い孤立状態を有しながら分散できることを吸収スペクトル測定および透過型電子顕微鏡観察より明らかにした。また、このCNT/Cu(II)(BPS)_2分散水溶液に、Cu(I)に対する配位能が高いバソクプロインジスルホン酸(BCS)を共存させた状態で、Fe(II)イオンによる還元反応を行うと、完全にCNTが凝集することを示した。CNTの凝集は還元反応を起点としているため、今後CNTの光励起を利用した還元反応を検討する上で、Cu(II)(BPS)_2錯体がD分子として有効であることを明らかにした。
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Research Products
(1 results)