2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J10138
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
奥中 牧子 (土田 牧子) Meiji University, 文学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 音楽学 / 日本音楽史 / 歌舞伎 / 劇音楽 / 近代 |
Research Abstract |
2009年度に行なった研究は、(1)陰囃子に携わる演奏家の動向の解明と、(2)陰囃子の音楽分析に大別することができる。どちらも、収集した付帳(陰囃子演奏家の覚書)を用いた研究である。 (1)では、陰囃子の演奏家であり付帳の収集家でもあった六合新三郎と杵屋勝四郎の動向を中心に、歌舞伎に出演した演奏家の動向を探った。明治時代の歌舞伎に出演した囃子方については、誰がいつどこの劇場に出演したか、ということはこれまでほとんど明らかにされていない。今回の調査では、新三郎と勝四郎の修業時代の活躍、昇格の時期、二人の共演歴などを明らかにした。これにより、明治時代に陰囃子が演奏家の間でどのように伝承されたかを知る手掛かりとなろう。 (2)では、a)九代目團十郎が演じた活歴と、b)歌舞伎で演じられた新派作品を対象とした。a)では、以前に行なった研究を踏まえ、作品全体における音楽演出の傾向と、九代目晩年以降の活歴の位置づけの再検討を行なった。その結果、活歴らしい音楽演出は作品の一部に使われており、全体としては旧来の方法を踏襲する音楽演出も多くみられることがわかった。また、その影響が多大であったために、團十郎が演じた活歴がどのようなものだったかも想像できなくなるほど、活歴は現在の歌舞伎に浸透しているという結論を導いた。b)では明治30年代に、中村福助(後の五代目歌右衛門)が演じた『己が罪』・『乳姉妹』・『不如帰』・『魔風恋風』の陰囃子の実態を明らかにした。いずれも、これまでに研究の対象とならなかった題材である。これらの音楽分析により、江戸時代以来の伝統を守るだけではなく、違った方向をも模索していた近代の歌舞伎の実態を解き明かすことにつながると考える。
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Research Products
(1 results)