2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J10192
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
富山 豊 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 現象学 / フッサール / 志向性 |
Research Abstract |
本年度の研究では、昨年度の研究を継続してフッサール初期志向性理論に属する諸概念の解明及びそれに関する諸問題の検討を行うとともに、その観点からフッサール志向性理論への展開の論理を追跡した。初期志向性の構造分析については「フッサール『論理学研究』における対象の超越性について」(『論集』29)において意味と対象の関係の観点から整理し、さらに英文でまとめ直したものを北京大学でのBESETO哲学会議において発表した。中期志向性理論への展開については、「初期・中期志向性理論における意味概念の動揺」(『現象学年報』26)において展望を描いた。より詳細には、初期志向性理論については、意味と対象の相関構造をとりわけ対象の超越性という側面に注目して解明し、意味に関する一般的理論構築におけるフッサール特有の位置を明らかにした。中期志向性理論については、意味と対象について一般的な初期志向性理論の洞察から、いかなる動揺があったと考えねばならないかを明らかにした。 意味と対象の構造に関する理論的考察を展開する上で、その背景的地平として分析哲学者マイケル・ダメットのフルーゲ解釈から多くのヒントを得、とりわけ主体の有意味性把握の説明という意味概念の知識性格・透明性性格をその概念的眼目として取り出し、そこからの対象決定プロセスの構造解明に関してもダメットの議論から多くのヒントを得た。その際、ダメットの議論をフッサール現象学に適用する際の妥当性を検討する上での対比軸として、ヤッコ・ヒンティッカの志向性解釈を参照し、議論に厚みを持たせることに成功した。
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