2009 Fiscal Year Annual Research Report
先住民運動の民主主義受容を事例とした構成主義アプローチの有効性に関する検討
Project/Area Number |
09J10265
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮地 隆廣 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 比較政治 / 構成主義 / ボリビア / エクアドル / 先住民運動 / 民主化 / 規範 / 自然科学的な存在論 |
Research Abstract |
本研究は比較政治における新しいアプローチである構成主義の有効性を図る上で、ボリビアおよびエクアドルで活動する4つの先住民組織(ボリビア高地、ボリビア低地、エクアドル高地、エクアドル低地)の政治行動を分析することを目的としている。国政選挙の参加と、クーデターへの連座など制度外的行動のタイミングについて4組織を比較すると、四者四様となっている。その差異は、各組織が形成していった規範(適切と考える行動様式)の内容差に起因するというのが、本研究の仮説である。初年度は、構成主義の方法論を研究すると共に、ボリビアとエクアドルの高地運動を分析した。 政治行動の説明において、アクターが持つ所与の選好と、制度や構造の影響力を重視する伝統的な政治分析に対し、アクターの解釈行為を通じ規範が変化することを重視するのが構成主義の眼目である。本研究は、政治・経済など環境的条件が類似する両国を題材にし、さらに先行研究が指摘する政治行動に影響を与える諸変数(選挙制度の変化、先住民の人口規模など)をコントロールすることで、規範こそ行動の差異を生み出しているという因果的推論を確立することを狙っている。実際、2つの高地運動を調査した結果、各運動は酷似した環境にありながら、その状況を全く違った形で解釈し、適切な政権獲得行動に関し異なる規範を形成していることが判明した。そして、その規範変化が実際の行動に対応していることも明らかになった。この成果は2009年度に論文として発表された。 方法論に関しては、分析対象の発言から規範を特定するという作業が、実証性を重視する比較政治学が持つ自然科学的な存在論と相容れないことを指摘し、それへの対処方法(十分な発言データの集積と、特定された規範とは内容の一致しない発言データの存在の公開)を考案した。このことは2010年6月の日本比較政治学会にて口頭発表されることが決まっている。
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Research Products
(2 results)