Research Abstract |
構造解析や電磁界解析などの数値シミュレーション分野では,連立一次方程式を高速に解くことが重要である.連立一次方程式の係数行列が大規模で疎な場合は,反復法が有効であり,反復法の計算量の大半を疎行列ベクトル積計算が占める.したがって,本テーマの疎行列ベクトル積の並列計算高速化は非常に重要である.本年度の始めごろ,ブロック・サイクリック分割にブロック数の自動決定の戦略とブロック交換の戦略を取り込んだEBU法を開発した.EBU法では,従来の行列要素分配法に比べ,均等に非零要素を分配でき,疎行列ベクトル積の並列計算高速化ができた.実際,従来よく用いられていたブロック・サイクリック分割法に比べ,EBU法の方がスレッド数を多くした場合の並列性能が高かった.そこで,ある程度の成果が上がったと考え,情報処理学会の論文誌に投稿した.しかし,分割のブロック幅が適切でないこと,より簡易に実現できる手法との比較がないこと,BCSR形式での評価が必須であることが原因で棄却された.そこで,並列計算の最新研究の情報を収集することを目的として,ポーランドで行われたPPAM2009や,大阪大学で行われた日本応用数理学会の年会に参加した.参加した2つの会議で,GPUを利用した疎行列ベクトル積の高速計算などの非常に参考になる研究発表を聞くことができ,その経験を生かして,より効率の良いEBU法の開発に努めたが,研究発表や論文発表をするほどの成果を今年度はあげられなかった.しかし,連立一次方程式を高速に解くには,疎行列ベクトル積の並列計算高速化以外にも,既存反復法の改良や前処理の開発などのアプローチがある.既存反復法の改良や前処理の開発などのアプローチでは,2つの査読つきの論文発表と,6件の学会発表ができたので,研究発表の欄に記載した.
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