Research Abstract |
スクラムジェットエンジンの実現には超音速状態で燃料と空気を極めて迅速に混合する超音速混合促進技術が必須であり,燃料の超音速混合には流れ方向に回転軸をもつ縦渦の使用が効果的であることが知られている.そこで,本研究は,縦渦導入デバイスの形状や流れの状態が,縦渦による混合領域の拡大と縦渦崩壊機構に与える影響を明らかにし,混合促進に適した縦渦導入デバイス形状について知見を得ることを目的とした.風洞流路スパン中央に設置したバックステップとそれを挟む膨張ランプにより,直径約5mmの互いに逆方向に回転する一対の縦渦(縦渦対)を導入した流れ場を対象とした.本研究では主流マッハ数(1.8、2.4),縦渦導入デバイスの膨張ランプ角(7°,10°,14°,22°,30°),縦渦導入デバイスに流入する境界層(層流境界層,乱流境界層),擬似燃料噴射の条件(噴射なし,空気噴射,ヘリウム噴射)をパラメータとして,シュリーレン法およびステレオPIVにより超音速縦渦による混合場を計測した. その結果,混合領域は2つの縦渦が互いに誘起する上向きの誘起速度により拡大することを示した.すなわち,変動領域の拡大率は縦渦の循環に比例し,縦渦同士の間隔と混合領域の流れ方向速度に反比例することを明らかにした.また,縦渦の崩壊はそれを取り巻く渦輪状の横渦構造と密接に関係し,渦輪状構造が強い場合には縦渦の崩壊が早まることを示した.また,Dimotakis 1)は亜音速流における実験に基づいて,剪断層や自由噴流などが微細な乱流渦を生成して崩壊していく条件はレイノルズ数Re>10^4であるというMixing Transitionの考えを提唱している.本研究の計測結果からも縦渦は渦レイノルズ数Re_Γ>10^4で崩壊が顕著であり,このMixing Transitionの考えが超音速縦渦に適用できることを示した. このように混合領域の拡大や縦渦の崩壊を支配するパラメータを特定し,種々の実験パラメータが流れ場に及ぼす影響についても実験的に明らかにしたことで混合状態を制御するための指針を示すことができたといえる. 1)P. E. Dimotakis, The mixing transition in turbulen flows, J. Fluld Mech., 2000, 409, 69-98.
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