2009 Fiscal Year Annual Research Report
近世トリーア選帝侯領における司法実践-領主・土地貴族・臣民三者の社会的関係から-
Project/Area Number |
09J10303
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小林 繁子 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員DC2
|
Keywords | 近世史 / ドイツ / 魔女 / 請願状 |
Research Abstract |
トリーア・ケルン選帝侯領とマインツ選帝侯領における魔女迫害が異なる方法によって行われたことに着目するという地域比較研究の視点から、史料調査を中心に作業を進めた。精密な地域研究が著されているトリーア・ケルン両選帝侯領に対し、マインツ選帝侯領に関しては未だ十分な研究がなされていないという理由から、ヴュルツブルク・バイエルン州立文書館およびマインツ市立文書館において史料調査を行い、マインツ選帝侯領の魔女裁判における直訴状の役割を分析する作業を行った。直訴状は中世後期から近世にかけて君主一臣民間のコミュニケーション回路として反乱や暴動から議会制度まで様々な場面に登場する重要な史料群であり、直訴状をテーマとして伊独二国間での共同研究が行われ論集が出版されるなど、近世研究の文脈においてその重要性が徐々に認められるようになってきている。この直訴状という史料群そのものを取り上げることによって、様々な研究領域と魔女研究を切り結ぶ可能性が開かれる。 その成果の中間報告として2月に日独の研究会・学会で報告を行った。国内の報告では魔女裁判において直訴状が果たした役割を文書館史料を紹介しつつ具体事例を挙げ整理した。直訴状と言うある種普遍的な史料を取り上げたことにより、様々な分野の研究者から質問と高い関心が寄せられたことも付記する。また魔女迫害というテーマに関してかなりの精度で研究が進んでいるドイツにおいても、直訴状は集中的には取り上げられていない。直訴状に着目しつつ三聖界選帝侯領における魔女迫害の構造を比較するという観点は、ドイツで行われた学際魔女研究学会・年次大会においてもおおよその支持を得られた。
|
Research Products
(2 results)