2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J10313
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岸 哲史 東京大学, 大学院・教育学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 睡眠 / ダイナミクス / 遷移確率 / 超日リズム / 慢性疲労症候群 / 線維筋痛症 |
Research Abstract |
本研究では,ヒトの睡眠の動的側面に着目した解析手法を提案することにより,睡眠の動的構造に関する新たな理解を得ることを試みた。その結果,次のようなことが明らかになった。 1.慢性疲労症候群(Chronic Fatigue Syndrome; CFS)と線維筋痛症(Fibromyalgia; FM)は睡眠感の悪さを主要な症状とする類似した病態を持つ。FMを併発したCFS患者(CFS+FM)と,併発していないCFS患者(CFS alone)の睡眠の動的構造について検討した。その結果,健常群と比較してCFS alone群はレム睡眠から覚醒への遷移確率が有意に高かった。一方,CFS+FM群は健常群と比較して,覚醒,睡眠段階I,レム睡眠から睡眠段階II,深睡眠から覚醒,睡眠段階Iへの遷移確率が有意に高かった。また,CFS+FM群は睡眠段階IIの持続時間分布が健常群,CFS alone群と比較して有意に異なり,持続時間が短くなっていた。これらの結果から,CFSとFMは異なる睡眠制御の問題を持った異なる疾病であることが示唆された。これらの睡眠の問題の背後にはサイトカイン分泌パターンの異常が考えられ,引き続き検討を進めていく。 2.モノアミン系(セロトニン・ドーパミン)の拮抗薬が睡眠段階遷移の動態に及ぼす影響について検討した。その結果,服薬夜は対照夜と比較して睡眠段階IIから深睡眠への遷移確率が有意に増加し,睡眠の90分周期の超日リズムが有意に延長していた。そこで,睡眠の超日リズムと睡眠段階遷移の直接の対応関係及び睡眠段階遷移の背後にある遷移強度の時間的構造について検討したところ,超日リズムが延長していたときにはその周期内で睡眠段階IIから深睡眠への遷移確率が有意に増加し,同時にその周期内で遷移強度のピークの個数が有意に増加し,ピークが現れるまでの時間も有意に延長していた。これらのことから,睡眠段階遷移の時間的構造は特定の神経伝達物質の影響を受けること,また,超日リズムの生成機序を考える際にはnon-REM睡眠内での遷移を新たな要因として加えたモデルを検討する必要性が示唆された。
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Research Products
(2 results)