2011 Fiscal Year Annual Research Report
コンクリートの界面におけるひび割れ伸展のメカニズム解明と力学特性値の向上
Project/Area Number |
09J10339
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
佐藤 あゆみ 公立大学法人秋田県立大学, システム科学技術研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | コンクリート / 破面解析 / 補修 / 補強 / 界面 / 破壊力学 / ひび割れ / クラックパス |
Research Abstract |
本研究は新コンクリートを既存建造物に付加する際,コンクリート構造物に生じる新旧コンクリート界面の付着に関わる性能向上を検討するものである。本年度は「破面解析モデルゴを提案し,モデルを有限要素解析に適用することで,界面のひび割れ伸展メカニズム解明に着手した。下記に破面解析モデルを中心とした研究成果について示す。 q)破面解析モデルと有限要素解析 破面解析モデルは著者が開発したもので,コンクリート構成材料を単純化,理想化して二次元に配置するモデルである。界面近傍の化学的な解析を基に,界面は水酸化カルシウムが多く,骨材が少ない界面層としてモデル化した。さらに本研究で提案した破面解析モデルを有限要素解析(FEM)に適用し力学特性値を評価した。FEM結果の力学特性値と最終ひび割れ歪み(ひび割れ)の特徴について考察した。 (2)ひび割れ伸展メカニズムに関する考察 上記のFEMの結果,材料内部の脆弱な要素の分布状態が異なることで,力学特性値とひび割れが異なることが分かった。まず,脆弱な要素が集中して分布する打継ぎ界面の場合には,ひび割れが界面のみを伸展するため,破面の総延長は短くなり力学特性値が低下するのである。しかし,脆弱な遷移帯が適度に分布する場合,破壊時には遷移帯を縫うようにひび割れが伸展するため,破面の総延長がモルタルより長くなり,見つけ面積当たりの強度が大きくなるのである。 (3)力学特性値の向上の具体策 上述のように,コンクリートとその界面のひび割れ伸展メカニズムに関する考察が深化したことで,コンクリート界面を含む部材の力学特性値向上に関する具体策が提案できた。例えば,補修材を母材よりあえて弱くすることで,界面を破壊せずに補修材側へひび割れを大きく迂回させ,部材としては強度や靱性を向上させることが可能である。 これらの成果は博士論文「非均質性を考慮した破面解析の提案」としてまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上記9.研究実績の概要に示した通り,破面解析モデルを中心にコンクリートのひび割れ伸展のメカニズム解明に着手できた。さらに,新旧コンクリート界面の力学特性値向上に関する具体策を提案できた。例えば,界面における潜在水硬性の発揮や機械的アンカー効果の影響などである。また目荒しの深さ,接着層の有無ひび割れ伸展を制御可能であるかについて,破面解析モデルによって検討が可能になった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では,界面の付着に関する機構をより詳細に考察するために,界面近傍の壁効果やブリーディングを反映した水和物生成など,セメント化学分野を取り込むことが重要である。また,実在コンクリート構造物の補強や補修を目指すとき,劣化した母材コンクリートや補修材を検討する必要がある。これまでの研究は,劣化のない実験室レベルの試験体を対象としていたが,今後はより大型の試験体や劣化した母材に研究対象を拡大する予定である。また,高靱性を特徴とする繊維補強セメント材料(SHCC)があり,その可能性が期待されている。しかし母材コンクリートとの界面に関する研究はほとんどないため,その検討を行う予定である。
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Research Products
(8 results)