2009 Fiscal Year Annual Research Report
6.7GHzメタノールメーザの放射メカニズムと大質量星形成機構の研究
Project/Area Number |
09J10375
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
杉山 孝一郎 Yamaguchi University, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 大質量星形成 / 電波天文学 / メタノールメーザ / VLBI観測 / データ解析 |
Research Abstract |
本研究では、大質量星(太陽の8倍以上の質量)の形成シナリオとして、"複数の小質量星が合体して形成"、"周りのガス円盤からの質量降着"の2説のどちらが正しいのかを解き明かすことを最終目標としている。そのために、私は大質量星形成領域のみから検出され、かつ寿命の長い6.7GHzメタノールメーザを、ミリ秒角スケールの高空間分解能を達成できる超長基線干渉計(VLBI)を用いて観測している。特別研究員申請時には、観測対象天体として、ガス円盤に付随している可能性のあるCepheus A(Cep A),Monoceros R2(Mon R2),W75 North(W75 N)の3天体を選出しており、年次計画通り、平成21年度中にこの3天体の1年以上に亘る3回のVLBI観測を無事終了することができた。 Cep AのVLBI観測は、大学連携VLBI観測網(JVN)を用いて2006年9月9日、2007年7月28日、2008年10月25日に行われ、6.7GHzメタノールメーザの固有運動(視線方向に垂直な、赤経・赤緯方向への運動)の検出に成功した。検出された固有運動は、全体的な空間分布から予想される楕円構造上に沿った方向への運動を示しており、その大きさは博士前期課程時に予想していた値に近い大きさを示していた。今回得られた固有運動に、視線速度情報を加えた3次元速度情報に対して、回転円盤モデルを用いた3次元フィッティングを行った結果、回転運動に(降着に伴う)インフォールを伴っているという結果が得られた。これにより、動的降着現象が大質量星の周囲でも生じていることが明らかとなった。実際に質量降着の現場を直接的に固有運動として観測出来たのは、今回が世界初である。本結果について、日本天文学会2009年秋季年会をはじめとした多数の研究会で発表を行い、現在論文執筆中である。
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