2009 Fiscal Year Annual Research Report
前頭前野活動の個人差を生む要因の網羅的解析 -多様性の認知神経科学-
Project/Area Number |
09J10385
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
青木 隆太 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 個人差 / 脳機能イメージング / 前頭前野 / 機能的近赤外分光法(NIRS) / 光トポグラフィ / ワーキングメモリ |
Research Abstract |
本研究は、「前頭前野」と呼ばれる脳領域のはたらきの個人差を解明することを目的としている。前頭前野は、記憶や注意といった高次認知機能、情動や価値判断などの感情機能の両方に関わるとされている。そのため、前頭前野機能の個人差の要因を調べることは、我々ヒトの思考や価値観が多種多様であることの生物学的基盤を理解することにつながる。また、前頭前野機能はうつ病や認知症など現代社会において重大な問題となっている疾患とも関連するため、本研究の成果がこうした疾患のリスク予測や予防に役立つ可能性もある。本年度は、脳機能イメージング技術のひとつである光トポグラフィ(機能的近赤外分光法)を用いて3種類の実験をおこなった。第1の実験では、40名の健常者に対して"ワーキングメモリ課題"という認知課題を課したときの前頭前野活動を計測し、被験者の性格傾向(自己記入式の質問紙尺度を使用)との関連を調べた。その結果、性格傾向と脳活動の間には相関があり、特に"空間性"と"言語性"の2種類のワーキングメモリ機能がそれぞれ別の性格特徴と関連することが示唆された。第2の実験では、第1の実験参加者の一部に対して、日をおいてさらに2回(計3回)同一の脳機能計測を実施する追跡調査をおこなった。この実験からは、同一個人内での計測回ごとの脳活動の違いは、その時々の気分状態の変動を反映している可能性が示された。これらの結果にもとづき、第3の実験ではさらに規模を拡大し、90人の成人男女に対して同様の計測をおこなった。今後、このデータを使用して「脳活動の個人差と性格傾向」および「脳活動の個人内変動と気分状態」の両者を同時に解析する予定である。修士からの3年間で延べ190名分の脳活動データを収集できた。200名以上の脳機能計測データを用いた研究は世界的にも数えるほどしか例がなく、他に類のない貴重なデータベースを構築できたといえる。
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